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毎日新聞 2021/11/5 08:00(最終更新 11/5 09:28) 有料記事 2603文字




 4月に東京都大田区の自宅で、大学2年の長男と高校2年の長女を包丁で刺して殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた母親の女性被告(47)に対する裁判員裁判の初公判が4日、東京地裁(神田大助裁判長)であった。弁護側は事件の6日前に新型コロナウイルスによる肺炎で被告の夫が亡くなったことを明らかにした上で、被告と長女の感染が判明し、将来を悲観して無理心中を図ったと主張した。

 主な被告人質問でのやり取りは次の通り。【木原真希、鈴木拓也】

大量の事務処理で「パニック」
 <被告は上下黒っぽいジャケットにスカート、白シャツ姿で、肩までの黒髪はきれいに整えられていた。事件時にけがをしたという右手小指には包帯が巻かれていた。弁護人はまず、事件前夜に被告が自殺を考えたことについて質問していく>

 弁護人 自殺を考えたのはいつか。

 被告 事件前日の夜。「しんどい。死にたい」と考えてしまった。

 弁護人 なぜ自殺しようと思ったのか。

 被告 心の支えだった夫が急に亡くなり、さみしく、絶望感がある中で、大量の事務処理があり、今まで家計に関わってこなくて、全然把握していなかったのでパニックになってしまった。

 弁護人 事務処理とは?

 被告 夫の通帳が出てきて、印鑑も10個以上あった。(金融機関の口座の)暗証番号も一つしかわからなかった。クレジットカードもたくさんあって、解約しなければと思った。こんなにあるのかと、早くしなければと、一人で焦ってしまった。

 弁護人 クレジットカードはどのくらいあったのか。

 被告 20枚ぐらい。

 弁護人 「焦る」と「自殺」がどう結び付くのか。



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