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毎日新聞 2021/11/5 20:52(最終更新 11/5 21:13) 822文字




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厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 厚生労働省は5日の審議会で、児童相談所(児相)が虐待を受けた子どもを親から引き離す「一時保護」について、開始時点から司法審査を導入する案を提示した。児相の請求で裁判官が「一時保護状」(仮称)を発行する仕組み。一時保護の判断の適正性や透明性を確保する狙いがあり、厚労省は児童福祉法(児福法)改正案を来年の通常国会に提出する方針。

 一時保護は虐待の通告などを受けた子どもを児相所長らが原則2カ月以内で親権者から分離する行政処分。この期間内に児童養護施設への入所や家庭復帰、里親委託などの処遇を決める。2017年の法改正で、親権者の同意なく2カ月の期間を超す場合のみ、家裁の承認が必要となった。



 厚労省が示した案では、一時保護を開始する段階で、司法の審査を受けるように踏み込んだ。一時保護の前または開始から一定期間以内に、児相が裁判所に対して「一時保護状」を書面で請求し、発行を受ける必要がある。親権者が一時保護に同意する場合は除く。これまでの議論で、一定期間は、3日以内や7日以内とする案が出ている。

 裁判官は児相がその時点で収集した資料などを基に可否を審査。仮に妥当でないと判断した場合、発行を却下して一時保護を解除する枠組みを想定している。



 一時保護を巡っては、家庭に介入する児相に親が反発して不信感を抱きやすい。開始段階に司法の審査を組み入れることで、親が一時保護を受け入れやすくする狙いもある。厚労省によると、19年度の一時保護は全国で5万2916件あった。

 後藤茂之厚労相は5日、東京都内で記者団に「人権が関わることなので、手続きを踏むことも大切」とした上で、「仕組みの適切な運用を第一に考えている」と述べた。



 また、専門性を持って虐待に対応する新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」の創設も提案。社会福祉士や精神保健福祉士の資格者や現場の実務経験者を対象に、新たな機構で認めた研修を経て認定する仕組みを検討している。【小鍜冶孝志】