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毎日新聞 2021/11/7 13:00(最終更新 11/7 13:00) 有料記事 2628文字




 企業内に蓄積された利益にあたる「内部留保」(利益剰余金)が2020年度、過去最高の484兆円に達した。経済の先行きが見通しづらい中、できるだけ手元にお金を確保して「万が一」の事態に備えたい思惑が働いたとみられる。

 一方、内部留保に対しては「企業が巨額の利益を上げる一方、従業員の賃上げや設備投資に回さずにため込んでいる」との批判も絶えない。政府内からも賃上げの方策として内部留保の一部である現預金に課税する案が浮上している。内部留保は企業にとって危機から守ってくれる「防波堤」なのか、それとも日本経済の成長を阻む「足かせ」なのか。

ため込む企業は「守銭奴」?
 「守銭奴みたいなものだ」。内部留保批判の急先鋒(せんぽう)だったのは、10月に退任した麻生太郎・前財務相だ。15年1月、東京都内で業界団体が主催した新年賀詞交歓会の場で、企業が内部留保を積み上げている姿勢をこう批判した。

 麻生氏は翌日の記者会見で「利益が出れば賃上げや配当、設備投資に回すのが望ましいという趣旨だ」と説明。法人税の引き下げなどさまざまな企業優遇策を講じてきた立場の麻生氏から見れば、内部留保の増加は減税などで浮いたお金を企業が自らの懐に入れてしまう行為に見えたのだろう。

 後任の鈴木俊一財務相も10月の就任記者会見で「企業の内部留保はかつてないほどたまっている」と指摘するなど、政府内には内部留保をどうにか賃上げや成長投資に回したいという思いが強い。

 そもそも「内部留保」とは何だろうか…

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