9日、新型コロナウイルス経済対策の18歳以下に対する給付は、現金とクーポンを各5万円とすることで自民、公明両党が折り合った。衆院選で公明が掲げた「10万円」の骨格を自民がのんだ形となったため、自民が主張する年収960万円の所得制限に関しては公明が譲歩することになる、との見方も。インターネット上では富裕層を含む一律給付案に「ばらまき」との批判が出ており、両党は神経をとがらせている。

 この日、公明の石井啓一幹事長は自民の茂木敏充幹事長と会談した後、記者団に「自民党さんから『所得制限を設けるべし』という強いお話があり、持ち帰って検討する」と述べた。片や、茂木氏は「石井幹事長は、できるだけ早くしたいという思いで取り組まれると思う」と念押しを忘れなかった。

 所得制限導入に自民が固執する理由は、世論の動向だ。ネットでは「高所得世帯も困窮世帯も同じというのは矛盾している」「所得制限を設けて、本当に支援が必要な人たちにもっと重点的に配分した方がいい」といった声も相次ぐ。事務所に同様の抗議の電話が寄せられたという自民の閣僚経験者は「公明案を丸のみすれば、衆院選からのいい流れが逆風に変わってしまう」と話す。

 公明内のムードにも変化の兆しが。山口那津男代表は9日午前の記者会見で、所得制限を巡る見解を問われ「わが党にもそういう考え方はもちろんあった」とコメント。党関係者も「自公でがたがたするぐらいなら、早く決めるべきだ」と自民に配慮した着地点をほのめかす。

 コロナ禍でしわ寄せを受ける子どもを社会全体で応援するとして、公明は10万円の「未来応援給付」を打ち出したものの、当初から「経済対策なのか福祉施策なのか、目的が曖昧」(政府関係者)との指摘があった。ツイッターにはもっと直接的に、「子どもの有無で貧困の(状態にある)大人を分断してはいけない」と疑問を呈する投稿も。昨年の国民一律10万円の特別定額給付金は貯蓄に回る傾向が強かったとの分析を基に、経済効果が「限定的」とする声もある。

 賛否が割れる現金給付に、あるエコノミストは冷めた視線を送る。「岸田文雄政権が分配を重視するのであれば、より生活の安定につながるよう優先して取り組むべき別の対策があるのでは」

(大坪拓也)

西日本新聞 2021/11/10 6:00
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