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毎日新聞 2021/11/14 13:39(最終更新 11/14 13:40) 785文字




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台湾の蔡英文総統=米ニューヨークで2019年7月12日、隅俊之撮影

 台湾の蔡英文政権が、サイバー攻撃、台湾海峡周辺での軍事的な活動、フェイク(偽)ニュースの拡散など武力攻撃とは判断できない「グレーゾーン事態」への警戒をこれまで以上に強めている。台湾軍は、中国の習近平指導部が、台湾社会を混乱に陥らせて「戦わずして台湾を勝ち取る」ことを狙っているとみている。

 台湾国防部(国防省)が発表した2021年版の国防報告書によると、19年〜今年8月、中国からのサイバー攻撃とみられる異常なアクセス数が14億回を超えた。国防部は今年7月には、政府や軍の関係者、与野党幹部らが利用する無料通話アプリ「LINE」のアカウントがハッキング攻撃に遭ったと発表している。中国がサイバー攻撃によって、中枢機能の破壊を試みる可能性があり、台湾当局は対策を強化する方針。



 国防報告書によると、20年9月〜今年8月の1年間には、中国人民解放軍の戦闘機「殲16」や対潜哨戒機「運8」、爆撃機「轟6」など延べ554機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した。台湾軍は緊急発進(スクランブル)の対応に追われた。中国側には台湾軍を消耗させる狙いもあるとみられる。

 さらに台湾当局を悩ませているのが偽ニュース攻撃だ。台湾側は、その多くが中国本土からとみている。台湾内政部(内政省)の陳宗彦・政務次長は毎日新聞の取材に対し「新型コロナウイルスの感染が拡大した時期に、台湾政府を非難したり、社会の不安をあおるような内容の偽ニュースが増えた」と指摘する。民間団体「台湾ファクトチェックセンター」によると、コロナの感染が急拡大した今年5月ごろに寄せられた偽ニュースに関する情報提供は通常の5〜6倍に膨れ上がった。



 シンクタンク・遠景基金会の頼怡忠・執行長は毎日新聞の取材に「中国による偽ニュース攻撃は、昨年までとは比べものにならないほどに組織化されている」と指摘する。【台北・岡村崇】