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2021年11月22日07時16分

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インタビューに答える宮本雄二元駐中国大使=10月29日、東京都港区




 来年2月の北京冬季五輪を前に、中国政府による人権侵害を非難し「外交ボイコット」を呼び掛ける声が欧米で高まっている。2008年の北京夏季五輪の開催時に駐中国大使だった宮本雄二氏は10月末のインタビューで、中国社会全体では人権侵害との意識は低く、批判が続けば「国際社会との付き合いはそこそこでいい」という風潮が高まる可能性があると指摘した。主なやりとりは次の通り。


 ―夏季、冬季と北京で五輪が続く。
 夏季大会では、経済発展した新しい中国を発信して世界に認められたかった。北京市民にモラル教育を施し、世界有数の建築家が建物を造り、北京は変わった。五輪は国民の誇りとなり、次の発展に向けた自信になった。冬季大会も国威発揚と自信を高めることを考えている。五輪は全世界が注目する。1度目の大会で味を占めたわけだ。
 ―新疆ウイグル自治区でのウイグル族迫害などへの批判は、国内でどう捉えられているのか。
 ウイグルは共産党統治の不満からテロに及ぶ一部イスラム過激派の抑え込みの問題であり、人権侵害とは思われていない。国民は08年当時、中国の評判を損ねる動きに「なぜ言い掛かりをつけるのか」と怒っていた。胡錦濤政権は、国粋主義的ナショナリズムが高まる中、国内の反発を抑え、国際社会に説明して批判緩和に努力した。
 習近平政権下で国際関係はより緊張している。中国と国際社会を遠ざける要素が多く、批判が強まれば、付き合いはそこそこでいいとして中国社会が世界から離れる可能性がある。ただ、中国政府はそこまでは望んでいない。
 ―五輪に政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」論が再燃している。
 08年当時は中国の成長で日本や欧米企業が潤った。巨大市場は捨てられない。各国大使の間では、出席が基本姿勢だった。今回も経済利益を犠牲にしてまで中国と関係を悪くするとは思えない。
 ただ、米政府は、来年の中間選挙に有利だとみれば姿勢を硬化させる可能性がある。一方で、米中貿易協議の「第1段階合意」の実施時期に入り、中国に米国産品を購入させなければならない。そこをバイデン大統領がどう考えるかだろう。