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毎日新聞 2021/11/23 12:00(最終更新 11/23 12:00) 有料記事 2127文字




 本籍や生年月日、結婚歴、親族関係――。膨大な個人情報が、自分の知らないところで他人に入手されている。防ぐ制度はあるが、ほとんど利用されていない。警察幹部が「たまたま発覚した」と明かした事件では、不正取得された住民票や戸籍謄本などが計約3500通にのぼった。誰でも漏えいのリスクがある個人情報をどう守ればいいのか。実態を追った。

元妻の周囲に探偵が
 「あんた、調べられてんで」。2020年4月、兵庫県警姫路署に相談に訪れた40代の男性会社員は、元妻から言われて被害に気付いた。元妻の自宅周辺を、探偵が聞き込みに回っているという。男性が心配して市役所で照会すると、自分の個人情報が何者かに取得されていたことが分かったというのだ。

 男性は当時、女性医師と交際していた。ただ、医師の母は2人の交際に納得せず、関西地方の探偵業者に男性の身辺調査を頼んでいた。県警の捜査で、探偵業者から依頼を受けた宇都宮市の行政書士(51)が約2カ月前、姫路市役所から男性の戸籍謄本などを取り寄せていたことが分かった。

行政書士を兵庫県警が逮捕
 県警は21年8月に2回、この行政書士を戸籍法違反などの疑いで逮捕。目的を偽り、男性を含めて計9人の戸籍謄本などを姫路市や大阪市などから不正取得した容疑だった。探偵業者から依頼を受け、取得した戸籍謄本などを渡していたといい、姫路簡裁から罰金100万円の略式命令を受けた。

 一連の捜査で、行政書士は約5年間で全国の探偵55社から依頼を受け、計約3500通の戸籍謄本などを不正に取得していたことが判明。1通につき手数料は2万〜4万円で、県警は計約7000万円の報酬を得ていたとみている。

 戸籍謄本などを本人以外が取得するには委任状が必要だ。ただ、弁護士や司法書士、行政書士らは委任状がなくても「職務上請求書」を使えば、本人の同意はいらない。戸籍法などに基づく仕組みで、行政書士の場合、自動車の名義変更代行や遺産相続の相続人調査といった理由で使わ…

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