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毎日新聞 2021/11/24 14:00(最終更新 11/24 14:00) 有料記事 1869文字




 19日に決定した政府の経済対策で、介護職や保育士、幼稚園教諭とともに看護師の賃金を引き上げる方針が決まった。来年2月から介護職や保育士、幼稚園教諭は月9000円、看護師は月4000円の賃上げになる見込みだ。新型コロナウイルス感染症対策に尽力した「エッセンシャルワーカー」への「慰労金」と見せかけて、岸田文雄首相が進める「所得倍増計画」実現に向けた布石にほかならない。所管する厚生労働省への取材から、浮かび上がった「思惑」とは――。【神足俊輔、阿部亮介】

介入可能な公的賃金?
 首相は9月の自民党総裁選に立候補するにあたり、「分配政策 岸田4本柱」の一つとして、看護師らの処遇改善を訴えていた。公約には「看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士など、賃金が公的に決まるにもかかわらず、仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やすため、『公的価格評価検討委員会(仮称)』を設置し、公的価格を抜本的に見直し」と掲げている。

 公的価格とは、医療は診療報酬、介護は介護報酬、保育所や幼稚園は公定価格を指す。これらは事業者がサービスを提供し、その「対価」として支払われる利用料を政府が決めている。得られた対価を基に、事業者は人件費も含めた経費を捻出するのが一般的だ。「賃金が公的に決まる」というのはこうした仕組みを指しているとみられ、首相は政府の介入で賃上げが可能だと考えているようだ。

 経済対策で決まったのは、いずれも来年2月から9月までの間で、看護師は収入の1%相当の月4000円、介護職や保育士、幼稚園教諭は収入の3%相当の月9000円の賃上げ。こうした費用を公的価格で賄うためには時間がかかるため、当面補正予算で計上した交付金を充て、来年9月以降は公的価格を見直して財源とする方針だ。

上げ幅、職種に不透明感
 看護師とその他の職種で、引き上げ幅に差があるのはなぜか。…

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