世界では、環境や地域、従業員などの幅広いステークホルダーに配慮する「ステークホルダー
資本主義」の機運が高まっている。株主か、環境か――。脱炭素が急務の企業が決断を迫られ
ている。化石燃料である天然ガスを収益源とする東京ガスが、1つの決断を下した。

 東京ガスは2021年9月29日、株主還元方針を変更すると発表した。脱炭素投資に資金を振り向け、
総還元性向(当期純利益に対する配当と自社株式取得の割合)をこれまでの6割程度から5割程度に
引き下げる。22年3月期の期末配当から適用する。

投資家から不満噴出

 株価も反応した。20年11月半ばに2600円付近で推移していた株価は、発表後に2200円台に下落。
これを受けて東京ガスは、21年4月に予定していた発表を延期し、半年の期間を経て今回の発表となった。

 投資家が求めたのは、株主還元の縮小によって捻出される投資額が、どれだけ企業価値や投資
リターンに影響するかという説明だ。捻出される金額は年間60億〜80億円とみられる。同社の
20年度の設備投融資額は3317億円で、株主還元の縮小による捻出額はこの約2%である。

https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/111700142/