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毎日新聞 2021/11/27 20:12(最終更新 11/27 20:13) 有料記事 2254文字




 自衛隊が東京都と大阪府で運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターは30日、半年間の開設期間を終えて閉鎖される。首都圏と京阪神圏で高齢者への接種を促すために菅義偉前首相の指示で開設されたが、対象地域、対象年齢を拡大することとなり、見通しの甘さを印象づけた。開設期間は2回延長され、終盤は空きが目立った。接種実績は延べ約196万回(25日現在)で国内全体の1%程度。鳴り物入りのスタートとは裏腹に、センターは静かに役目を終えようとしている。

取れない予約、再延長…甘い見通し
 センターは菅氏の指示で4月下旬に設置が決まった。「7月末までの高齢者接種完了」に向けて自治体での接種を後押しする使命を帯びてスタートした政治主導の事業。「時間がなく、走りながら調整するほかない」と自衛隊幹部が話した通り、対応の改善を繰り返す日々だった。

 1日の予約枠は最大で東京会場1万人、大阪会場5000人(キャンセルなどに備えた上乗せ分を除く)。初日は大盛況だった。「一日でも早く打ちたくて」「地元自治体で予約が全然取れなかった」。東京会場ではこんな声が聞かれた。

 だが、間もなく予約枠は埋まりづらくなる。防衛省は6月10日、65歳以上の対象年齢を維持したまま対象地域を全国に広げると発表。同16日から対象年齢を18歳以上に引き下げた。さまざまなてこ入れで、予約枠の9割超を埋め続けた。

 開設期間は当初、8月末までだった。1回目の接種が済んだ人に同じ会場で2回目を受けてもらうため、9月下旬まで延長。さらに若年層への接種を促すため、11月末まで延ばした。

 ところが、この再延長はセンターの光景を一変させた。9月26日〜10月23日に実施した1回目の接種は計7万7374回分。予約枠の2割に満たなかった。利用者の激減は明白で、防衛省幹部は「需要がここまで『蒸発』するとは思わなかった」と吐露した。

 菅氏は希望者へのワクチン接種を10〜11月に終えられるよう取り組む方針だった。同省幹部は「総理の方針がある以上、それなりの態勢を組む必要があった」と述べ、再延長はやむを得なかったとみる。

「災害なしが救い」医官ら1割投入
 ただ、自衛隊の医療態勢への影響は小さくなかった。センターには連日、医師免許を持つ医官約90人と看護師資格を持つ看護官ら約200人が投入された。うち医官は全国に1000人足らずで、約1割をセンターに充てた格好だ。彼らは一方で、隊員の健康管理やコロナ患者をケアする地域医療の担い手でもある。センターに医療スタッフを集中させられたことについて、省内では「医療支援が必要な大規模災害が起きなかったことも大きい」との見方が強い。

 半年間でかかったセンターの運営費はどれほどか。…

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