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2021年11月28日 12時0分スポーツ報知

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森永卓郎



 政府が決めた18歳以下への一律10万円給付で、「夫婦で収入が多い方の年収が960万円まで」とする所得制限が大きな批判を招いた。理論上、夫婦それぞれが950万円を稼ぎ、世帯年収が1900万円でも支給対象となるのに、片稼ぎで年収970万円の世帯は支給対象にならないからだ。

 その理不尽は、国民の大部分が共有しているにもかかわらず、政府が基準を変えなかったのは、世帯年収のデータを政府が整理した形で持っていなかったからだ。いま確定申告でも、年末調整でも、我々はマイナンバーを書かせられているが、そのデータが活用されていなかったことになる。

 そのこと自体が大きな問題なのだが、それより重要なことは、児童手当の支給にも同じ理不尽が存在することだ。子育ては世帯でするものなのに、世帯年収を無視して、個人を基準に児童手当給付の可否を判定している現状は、明らかにおかしいのだ。

 さらに日本は、税制面でもおかしなことをしている。日本の所得税は個人の所得に対して課せられる。しかし、主要国でそんなことをしているのは、英国くらいだ。欧米では、夫婦の所得を合算して、その金額の2分の1ずつを夫婦それぞれに課税する。つまり夫婦の平均所得に課税するのだ。この方式だと、世帯年収が同じなら、夫婦がどのような労働分担をしても、税額は同じになる。

 日本は、片稼ぎの場合は累進課税で高い税率が課せられるので、片稼ぎ世帯の税額が多くなる。世帯年収が同じでも、片稼ぎ世帯が納税する所得税は、夫婦の年収が同じ共稼ぎ世帯と比べて生涯で1000万円以上多くなる。夫婦がどのような労働分担をするかは夫婦が決めるべきで、それを税制で共稼ぎに誘導するのは、間違っていると私は思う(経済アナリスト・森永卓郎)