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2021/11/28 16:35
産経WEST


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新型コロナウイルスワクチンを2回接種した人が国内では76%を超え、希望者の大半が11月中に2回目接種を終える見通しとなった。新規感染者数の減少が続き、社会が活気を取り戻しつつある中で、雇用現場では未接種の人に対する不利益な取り扱いが懸念されている。未接種を理由とした解雇や雇い止めは許されないが、配置転換はグレーゾーン≠ニされ、妥当性の線引きが難しい。弁護士のもとには、コロナ禍ならではの雇用に関する悩みが寄せられている。

「現段階での接種見送りを職場に告げると、夏の賞与が減額され9月には退職勧奨を受けた」(看護師)

「未接種者に対する出勤禁止や配置転換が検討された」(障害者施設従業員)

日本弁護士連合会が10月上旬に開催したコロナワクチン接種に関する電話相談会「人権・差別問題ホットライン」には、93件の相談が寄せられた。その大半は接種していない人からで、未接種を理由に職場で差別的な取り扱いを受けたという内容が目立つ。

コロナワクチンの接種はウイルス蔓延(まんえん)防止の観点から、予防接種法に基づき、「接種を受けるよう努めなければならない」とされているが、接種は本人の意思に委ねられ、勤務先が強制することはできない。

ただ、2回目接種を終えた人の増加に伴い、勤務先が従業員に接種証明の提出を求めたり、未接種者を顧客対応から外すなど勤務の一部を制限したりといった動きが広がりつつある。

複数の弁護士会関係者によると、従業員が接種しないことだけを理由に勤務先が解雇や雇い止めに踏み切った場合であれば訴訟で取り消しが認められ、職場復帰できる可能性が高い。しかし、未接種者の勤務制限など従業員の配置に関しては、職種や勤務状況によっては合理性が認められる可能性もあるため、相談者へのアドバイスが難しいという。

厚生労働省は、従業員の配置転換についてホームページ上で、就業規則に基づく転勤や異動の必要性を認めつつも、必要性と比べ明らかに不利益が大きい場合は「権利乱用にあたる場合もある」と指摘。感染防止を理由に未接種者を接客業務から外すといった対応を行う際は、勤務先側による従業員への十分な説明や代替策の検討をするよう求めている。そして同意の強要などが確認された際には「パワーハラスメントに該当する可能性がある」とも記している。

コロナ相談の常設窓口を設けている大阪弁護士会でも、8〜9月ごろからワクチンの未接種に伴う差別や不利益などの相談が増えているという。相談業務に関わる木口充弁護士は「相談に対して明確な答えを出せないケースも多く悩ましい。個々の内容を聞いた上で、解決のポイントのアドバイスや情報提供をしていきたい」と話している。(杉侑里香)