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2021/11/28 18:12


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車にガソリンを給油する様子=東京都世田谷区のシンエネ八幡山(鴨志田拓海撮影)

政府が原油価格の高騰を受け、国家備蓄石油の一部放出や、石油元売り会社向けの補助金などの対策を矢継ぎ早に打ち出した。ガソリンなどの値上がりは新型コロナウイルス禍で傷んだ家計や事業者の経営を直撃する。需要が高まる年末年始に間に合うよう岸田文雄首相の指示のもと、萩生田光一経済産業相が具体策のとりまとめを急いだ。

「原油価格の安定はコロナからの経済回復を実現する上で重要な課題だ」

首相は24日、記者団にこう語り、米国などと協調して国家備蓄石油を放出すると表明した。日本として価格高騰を抑制するための放出は初めてだ。

政府は放出に向け米国と綿密なすり合わせを行っていた。通常は担当官庁が協議するが、バイデン政権の支持率が低迷する中、米側はホワイトハウスが主導し、国務省も参加。日本側も首相が前向きで、経産省に加え、国家安全保障局(NSS)や外務省も交渉にあたった。

政府関係者は「日米のコミュニケーションがうまくいき、すぐに動けた。米国も日本の参加で、他国に協調放出を呼びかけやすくなったはずだ」と指摘する。

首相には「需要が増える年末年始までに効果的な対策を打ち出したい」との思いがあった。地方での対話などでも、経営や生活が圧迫されているとの切実な声が寄せられていたからだ。

対策とりまとめを担った萩生田氏もこうした思いを共有していた。経産省関係者は「(萩生田氏は)地方で1円でも安いガソリンスタンドに車が並んでいるのを見て、どんな支援ならスピーディーにできるか考えていた」と打ち明ける。

選択肢には、ガソリン価格が3カ月続けて160円を超えた場合に揮発油税を一時軽減する「トリガー条項」もあった。平成23年の東日本大震災以降は凍結されており、萩生田氏も凍結解除を検討した。だが、国会での立法措置が必要で、支援が行き渡るまで時間がかかり、減税による国や地方の財政への影響も懸念された。

萩生田氏は年末に間に合うよう、石油元売り会社向け補助金の導入を決め、首相もゴーサインを出した。卸売価格の上昇を抑え、店頭価格の値上がりを緩和する狙いがある。

感染力が高いとされる新型コロナの変異株が南アフリカなどで確認されたことで足元の原油価格は急落している。店頭価格が下がれば政府が用意した補助金は使われずに済む可能性もあるが、政府は市場の動向を注視する構えだ。(田村龍彦)