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毎日新聞 2021/11/29 09:18(最終更新 11/29 09:18) 1252文字




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再開発計画に賛否の声がある秋葉原・外神田1丁目南部地区(中央を奥に延びる道を挟んだ両側を合わせた範囲)=千代田区で2021年11月24日午後3時42分、加藤昌平撮影

 アジア有数の電気街として知られる東京都千代田区・秋葉原の一画で、区などが進める再開発計画を巡って賛否が分かれている。区は当初、計画に対する賛成地権者の割合を約8割としていたが、途中で約5割に変更するといった経緯もあり、開発に向けた手続きに対して「拙速でないか」との懸念の声も上がる。

 問題になっているのは、同区の「外神田1丁目南部地区」の再開発計画。JR秋葉原駅西側の神田川に沿った一画で、家電量販店のオノデン本店やエディオン秋葉原店などが並ぶ。計画では現在の建物を壊し、高さ約170メートルのオフィスビルやホテルを建設する。



 区地域まちづくり課によると、計画では神田川に沿った立地を生かして魅力ある「水辺空間」を構築し、人を呼び込むようにしたい意図があるという。神原佳弘課長は「対象地区にある建物の半数以上が新しい耐震基準をクリアしておらず、安全面という意味でも再開発する必要がある」とする。また、再開発準備組合理事長を務めるオノデンの小野一志社長は「家電の海外需要が減る中、再開発が進む他の周辺地域と同じように魅力ある街づくりをしなければ、秋葉原は地域競争に勝てなくなってしまう」と危機感を募らせる。

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 区や組合は来年度にも再開発事業の認可手続きを終え、再開発に着手したい考えだが、一部の地権者から計画を疑問視する声が上がる。計画に反対するグループ「秋葉原の未来を考える会」によると、今回の再開発計画で高層ビルが建つと、地権者は独立した所有地を失い、所有地の価値に応じた持ち分を得ることになるが、「昨今のオフィス需要の減少から、ビルにテナントが入らなければ賃料を得られなくなるのではないか」と心配する声があるという。区の説明についても、地権者の一人で不動産業を経営する角田一郎さん(59)は「再開発のリスク面を区ははっきり説明していない」と不信感をあらわにする。また、対象地区で電子部品を販売する40代の男性店主は「ビルではうちのような店頭販売の商売は難しい」と顔をしかめる。


賛成8割→5割 区が割合を修正
 5月に開かれた区議会企画総務委員会で、区は再開発に賛成する地権者は約8割に上ると説明したが、「本当にそんなに多いのか」という指摘が寄せられた後、9月の環境・まちづくり特別委員会では約5割だと変更した。この変更理由について、区は「5月時点での数字は再開発準備組合の加盟者の割合を賛成者として示したが、区として独自に賛否を確認したところ約5割だった」と説明する。

 区はこの手続きについて不適切だったとの見解を示していないが、角田さんは「区が強引に開発を進めようとしているのでは」と懸念し、「地権者、借家人、周辺住人を含めて意見をしっかりと聞いて(再開発の可否を)判断してほしい」と訴える。



 これに対し、神原課長は「権利者への説明はしっかりしてきたつもりだが、開発エリアに含まれる公有地は区民全員に関わることでもあるので、必要に応じてさらなる説明や意見聴取を進めたい」と話している。【加藤昌平】