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毎日新聞 2021/11/29 21:46(最終更新 11/29 22:25) 1166文字




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新型コロナウイルスによる入国制限で海外から生徒が一部しか来日できず、ほとんどが空き教室となっている福岡日本語学校=福岡市南区で2021年11月29日、平川義之撮影

 外国人の入国が30日からまた原則禁止になる。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染が海外で広がっているためだ。留学生らの入国は8日に大幅緩和されたばかりで、たった3週間での逆戻りに受け入れ側の落胆は大きい。

 留学生を受け入れている「大阪YMCA国際専門学校」(大阪市)の日本語学科の責任者は「寝耳に水。現場では学生の入国のため、いろいろな申請作業が進められているのに……」と驚く。オンライン授業を母国で受けるなどして入国の機会を待っている学生が約50人いるといい、「入国規制がいつまでなのか、その根拠が何かを知りたい。国の指示がなく、戸惑っている」と話した。



 系列の大阪YMCA学院(同市)の職員は「青天のへきれきだ。例年、1月にも入学者を受け入れているが、絶望的なのではないか」と嘆く。政府が2020年末から1年近く留学生らの入国を原則認めてこなかったため、学生数は19年10月時点で約420人いたのに対し、21年11月時点で半数以下の約200人にまで減ったという。「学校運営は学生がいないことには成り立たない。入学者が最も多い4月に間に合うのか」と不安を漏らした。大阪府内にある別のインターナショナルスクールの職員は「今年こそ母国に帰って冬休みを過ごそうとしている生徒もいたが、今回の方針で帰国も難しくなるのでは」と語った。

 東京都内の私大大学院でデザインを学ぶ東南アジアの女性(30代)は4月に入学後、母国でオンライン授業を受けてきた。時差で講義が早朝になったり、作品制作に携われなかったりするなど「寂しく複雑な気持ちだった」。年明けに来日予定だったが、再び入国禁止になり「がっかりした。残り1年しかなく、日本に行って学べなかったら留学の意味がない」と話した。 「衝撃を受けている。トンネルの先に光が見えたと思ったらパタッと闇に閉ざされた気分だ」。福岡日本語学校(福岡市)の永田大樹(ひろき)校長はニュースで入国禁止措置を知り、がっくりと肩を落とした。本来はベトナムや中国、インドからの留学生約400人が通うが、現在は100人ほど。約250人が学費を納めたまま入国できずにいる。使っている教室は全14室のうち3室。他の空き教室には無人の机が並ぶ。永田校長は「再び入国のめどが立たなくなれば入学を諦め、学費の返還を求める学生が出るかもしれない。経営は危機的状況になる」と財政支援の必要性を訴える。



 外国人留学生を支援するNPO法人・国際留学生協会(東京都)には21年初めごろから「日本への留学を諦める」「別の国に変更する」と申し出る留学生が出てきたという。清水逸枝・事務局長は「一律に留学生の入国をシャットアウトせず、厳しい感染対策で対応して入国できる道を作ってほしい」と望んだ。【森口沙織、田中理知、比嘉洋】