産経新聞2021/12/8 11:39
https://www.sankei.com/article/20211208-FDBUQUWBWFL5HINRWW3HBBKXFA/

令和4年元日に群馬県内で開かれる「第66回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)」に、大阪府警陸上部が唯一の公務員チームとして出場する。新型コロナウイルス禍でさまざまな制約を強いられる中、業務の合間を縫って練習を重ね、6年ぶりに予選を勝ち抜いた。主将の谷原先嘉(まどか)巡査長(28)は「見てくれる人に安心感を与えられるような、『強い警察官』を印象付けたい」と意気込む。(江森梓)

まだ闇に包まれた午前5時ごろ、府警陸上部の練習は始まる。選手たちは1時間程度走った後、すかさず警察官としての業務にあたる。部員11人全員が第1機動隊に所属しており、雑踏警備のほか、災害など不測の事態があれば直ちに出動する。

チームには、多くの強豪で名を連ねるアフリカ勢はもちろん、全国的に名の知れた、いわゆるエリート選手もいない。「うちは雑草魂で頑張るんです」。谷原主将は笑う。

振り返れば、活動を制限された一年だった。緊急事態宣言中は府県をまたぐ移動を控え、毎年夏に長野県などで行う強化合宿は開催を見送った。府県での試合にもほとんど出場できず、実戦形式でレースを走る機会は減った。第1機動隊の山ア裕久第5中隊長は「警察官という立場だからこそ、政府からの要請は守らなければならない」と説明する。

そんな中、選手たちで話し合って練習に工夫を凝らした。実戦に近い形式を積極的に取り入れたほか、夏場は猛暑の日中を避け、早朝に重点的に走り込んだ。トラブルに強い警察官の本領をここでも発揮した。

11月に和歌山県内で開かれたニューイヤー駅伝の予選会では、第1走者の永信明人(えいしん・あきひと)巡査長(28)が区間トップで駆け抜けると、後続の選手たちもそろって区間5位以内でたすきをつなぎ、5位入賞。本番への最後のいすを勝ち取った。谷原巡査長は「メンバーに故障もなく、いい流れで走れた。もう、ニューイヤー駅伝に向けて気持ちが入っている」と前を向く。

駅伝日本一を懸け、37チームが争う元日のレースでは20位以内を目標に掲げる。節目の10回目となる大舞台を前に、監督の伐栗(きりくり)直樹警部補(49)は「正月でも働く全国の警察官に勇気を与えられるような走りを見せたい」と話している。