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2021年12月16日07時07分




 国土交通省が毎月公表する「建設工事受注動態統計」で、建設業者の受注を二重計上する不適切な処理が行われていたことが15日、明らかになった。政府統計では3年前に厚生労働省の「毎月勤労統計」で不正が発覚し、統計の一斉点検と再発防止を進めてきた。しかし、再度の不祥事で、客観的データに基づく政策立案が求められる行政の信頼性が大きく損なわれかねない事態に陥った。
 工事受注統計は、総務相が指定する特に重要な基幹統計の一つ。国内総生産(GDP)の推計で公共投資を算出する際に使用する。岸田文雄首相は15日の衆院予算委員会で、2020年1月以降のデータは修正済みとして「20年度、21年度のGDPに直接影響しない」と説明した。内閣府は過去のGDPへの影響を精査している。
 基幹統計では、賃金や労働時間の変動などを調べる毎月勤労統計で18年末、従業員500人以上の事業所を全数調査すべきところ、東京都分を抽出調査に切り替えていた不正が発覚。賃金などの数値が本来よりも低下し、同統計を基に支給する雇用保険や労災保険などで、延べ約2000万人や事業主に約600億円の支払い不足が発生した。
 これを受け、政府は基幹統計の一斉点検を実施。統計ミスなどをチェックする「分析的審査担当」の各府省への配置など再発防止策を導入したが、国交省での不適切処理を防げなかった。国交省の担当者は当時、総務省から示されたチェック項目に沿って点検したが「(二重計上などの)認識が薄く、気付けなかった」と説明。経済官庁幹部は「システム上、起こり得ない話。国交省の件はかなり特殊だ」と驚く。
 政府は近年、統計データを分析し効果的な政策を選択する「EBPM(証拠に基づいた政策立案)」を推進してきた。しかし、統計自体に正確性を欠けば、「政策全般の効率性や有効性の低下を招きかねない」(大和総研の神田慶司シニアエコノミスト)と危惧されている。