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毎日新聞 2021/12/16 10:03(最終更新 12/16 10:03) 844文字




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札幌地裁=岸川弘明撮影

 自治体からの要請でヒグマを駆除したら「民家に向けた違法な発砲だった」と判断され猟銃所持の許可を取り消された道猟友会砂川支部長の男性(72)=北海道砂川市=が、道に処分の取り消しを求めた訴訟は17日、札幌地裁で判決が言い渡される。安全性を巡り双方の主張は真っ向から対立。ヒグマの背後にあったのり面が流れ弾を防ぐ「バックストップ」と言えるかが最大の争点で、地裁がどう判断するか注目される。【高橋由衣】

 訴状などによると、男性は2018年8月、砂川市からの要請を受け、砂川署員や市職員らの立ち会いの下、同市内で体長約80センチの子グマを駆除した。現場は田畑が広がる山間の地域で、のり面の向こう側に民家などの建物が5軒点在し、発砲の数日前からヒグマの目撃情報が相次いでいた。



 約2カ月後、砂川署に発砲の違法性を指摘する情報提供があり、同署は19年2月、捜査の末に鳥獣保護法違反などの疑いで男性を滝川区検に書類送検したが、区検は起訴猶予処分とした。

 しかし、道公安委員会は同4月、「民家に向けた違法な発砲を行った」として猟銃所持許可を取り消す処分を出した。男性は行政審査請求をしたが、棄却されたため20年5月に提訴した。



 原告側は、子グマの後方にバックストップとなる高低差約8メートルののり面があり、約17メートルの至近距離からの発砲で狙いを外す可能性が極めて低かったなどと主張。民家に着弾する危険性はなく、安全な発砲だったとしている。

 公判で男性は「市職員から『住宅地ではないため銃による駆除をしても問題ない』との説明を受け、警察官からも特に異論は出なかった」と述べ、違法性を否定した。



 これに対し、被告側は、発砲地点から斜め上方向に民家が見え、「のり面はバックストップとは言えない」と反論。民家に着弾する恐れがあり、岩などにより周囲の建物に跳弾する危険性があったとしている。被告側証人の警察官は駆除されたのは「子グマで痩せ細り、人を襲う気配はなかった」と述べ、発砲自体の必要性を否定している。