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毎日新聞 2021/12/17 09:45(最終更新 12/17 10:27) 808文字




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倉掛冬生ちゃんが死亡した双葉保育園=福岡県中間市で2021年7月30日、奥田伸一撮影

 福岡県中間市の双葉保育園で7月、送迎バス車内に園児の倉掛冬生(とうま)ちゃん(当時5歳)が取り残され熱中症で死亡した事件で、福岡県警は17日、車内を十分確認せずにバスを施錠し冬生ちゃんを死亡させたなどとして、浦上陽子前園長(44)ら職員4人を業務上過失致死容疑で書類送検した。捜査関係者への取材で判明した。

 県警によると、冬生ちゃんは7月29日午前8時過ぎに前園長が1人で運転する迎えのバスに乗り、園に到着したが、施錠された車内に取り残された。炎天下で約9時間放置されたとみられ、午後5時15分ごろ、バス車内で倒れている状態で見つかり、その後、死亡が確認された。司法解剖の結果、死亡推定時刻は午後1時ごろとみられる。



 県警は、降車時にバス車内を確認せず冬生ちゃんを放置したとして、前園長と出迎えた女性職員の注意義務違反を認定。担任保育士らも冬生ちゃんの不在に気づきながら保護者らに出欠確認をしていなかった。県警はこうした過失が重なり、冬生ちゃんの死亡につながったとみて、前園長らの刑事責任が問えると判断した模様だ。

 捜査関係者によると、県警が事件後に実施した再現実験で、屋外に駐車したバス車内が50度以上に達していたことを確認。園職員や保護者ら約100人から聞き取りを進めたところ、バス送迎時の降車確認などを盛り込んだマニュアルはあったが徹底されていなかったことも判明した。



 一方、今回の事件は前園長や職員の個人的な不注意による過失が大きいことから、前理事長ら園の運営者側の立件は見送られた。また、前園長が故意に冬生ちゃんを閉じ込めた状況は確認されなかったという。

 事件を受け、園は園長や園を運営する社会福祉法人の理事長を交代させた。一方、県と中間市は園の特別監査を実施。バス運行を巡るずさんな安全管理体制に加え、別の複数の園児に対する暴言などの虐待行為があったとして、これまでに2度の改善勧告をした。【浅野孝仁】