https://mainichi.jp/articles/20211217/k00/00m/040/351000c

毎日新聞 2021/12/18 09:30(最終更新 12/18 09:54) 1125文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2021/12/17/20211217k0000m040356000p/9.jpg
巣に近づきハチを吸い込むドローン=養父市で2021年11月8日午前10時35分、宮本翔平撮影

 多様な分野で活用が広がるドローン(小型無人機)がハチの駆除に導入されている。駆除作業では強力な毒針を持つスズメバチに刺され、年10〜20人程度の死者が出ている。巣を取り除くには手作業が不可欠だが、ドローンを使うことで安全性は飛躍的に高まるという。

 山深い兵庫県北部の養父市草出で11月上旬、2階建て倉庫の軒部分に直径約35センチのスズメバチの巣がぶら下がっていた。「ブーン」とプロペラ音を響かせるドローン(幅約80センチ)を数メートル離れた地上からリモコン操作し、慎重に巣に近づけていく。バキューム機能があり、ラッパのように先端の広がった筒が飛び交うハチや巣を吸引した。仕上げの手作業を含めて約2時間で、女王蜂とみられる個体を含む100匹以上を退治して巣を取り除いた。




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2021/12/17/20211217k0000m040357000p/9.jpg
ハチの巣に向けて飛び立つドローン=養父市で

 ハチ駆除にドローンを活用するのは清掃用品のレンタル販売やミスタードーナツの運営を手がけるダスキン(大阪府吹田市)。県と公益財団法人「新産業創造研究機構」(神戸市)の支援制度を活用して実証試験に取り組んでいる。

 同社は以前から害虫駆除サービスを請け負っている。ハチ駆除は刺される恐れや巣が高い場所に作られることもあり高所作業の危険も伴う。実際に刺される事故があり、高い位置に巣がある場合は駆除を断らざるを得なかった。このため、2020年秋ごろからドローンの活用を検討。ドローン開発・販売を手がける「石川エナジーリサーチ」(群馬県)とともにハチ駆除専用機の開発を進めた。



 手作業の駆除では薬剤を噴霧するが、環境への影響も踏まえ、ゴキブリ駆除などで使うバキュームで吸い取る方法を採用した。

 ダスキンでハチ駆除ドローンの開発を担当する斎藤祐輔さんは「ハチは敵を認識すると警戒フェロモンを分泌して集団で攻撃してくる。ドローンにフェロモンが付くことで敵と認識したハチが集まり効率的に駆除できる」と説明する。石川エナジーリサーチの林一樹営業部長も「農薬散布用ドローンと違い、精密な作業が必要となるため、独自のプログラミングで安定した飛行を実現した」と胸を張る。現在は2号機でハチを吸い込む筒の調整などを続けている。



 実証試験は県内で9月と11月に行われた。「支援制度に加えて、兵庫県はハチ駆除のロケーションが多かった」と斎藤さん。公益社団法人日本ペストコントロール協会(東京)によると、16〜20年度の相談で兵庫県は全国最多で、20年度の相談2万1827件のうち、兵庫は4245件だった。

 ダスキンはドローンによるハチ駆除の全国展開を目指している。斎藤さんは「より高い場所に巣をつくる外来種のスズメバチの生息が国内で広がっている。ドローンの活用は今後、重要になる」と意義を話した。【宮本翔平】