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2021年12月19日15時33分

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【図解】イラク・シリア




 【ワシントン時事】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は18日、米国防総省の内部資料などに基づき、米軍が誤爆による民間人犠牲者数を大幅に少なく公表していた疑いがあると報じた。誤爆の可能性が報告された後も十分な調査が行われなかったケースも多く、関係者が何らかの処分を受けた例に至っては皆無だった。


 同紙は情報公開法に基づき、米軍が2014年9月から18年1月にイラクとシリアで実施した空爆に関する文書1311件を入手。さらに現地調査や関係者への取材を重ねた結果、誤爆による実際の民間人犠牲者は国防総省の認定より少なくとも数百人多いとみられることが判明した。
 文書の中には、米軍特殊部隊が16年7月にシリア北部で実施した空爆で、過激派組織「イスラム国」(IS)戦闘員85人を殺害したと報告したものがあった。しかし、空爆の標的となったのは、人々が銃撃戦を逃れて避難していた民家で、実際には市民120人以上が死亡したという。
 米軍はオバマ政権後期からテロリスト掃討に無人機を多用するようになった。米軍は誤爆を避けるため、空爆には厳格な手続きを踏んでいると主張。ただ、同紙は「(内部文書は)空爆がいかに欠陥のある情報や不正確な標的設定に基づいて行われていたかをあらわにした」と結論付けた。
 中東を管轄する中央軍の報道官は「世界で最も優れた技術をもってしても誤りは起こり得る」と説明。「米軍はそのような被害を避けるために最善を尽くしており、(民間人犠牲者の報告があれば)一つ一つ調査している」と同紙に語った。
 米軍はシリアとイラクにおけるIS掃討作戦で、民間人1417人が空爆によって死亡したと公表している。