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2021年12月19日18時30分

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立憲民主党の臨時党大会で新代表に選出され、記者会見する泉健太氏=11月30日、東京都港区

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立憲民主党両院議員総会で了承され発足した新執行部。(左2人目から)馬淵澄夫国対委員長、逢坂誠二代表代行、泉健太代表、西村智奈美幹事長、小川淳也政調会長、大西健介選対委員長=12月2日、国会内




 野党第1党・立憲民主党の新代表に泉健太氏(47)が就任したが、衆院選の敗因分析も含めて党立て直しへの道のりは険しく、永田町では早くも「参院選に向けての党運営は綱渡りで、新代表の前途は多難」(立民長老)との声が広がる。旧国民民主党出身の泉氏は、最大の敗因とされた共産党との「限定的な閣外協力」という踏み込んだ合意について、「中道保守へのウイング拡大」を視野に見直す構えだが、党内多数派のリベラルグループからは「共産党との関係を悪化させれば、来夏の参院選も敗北確実」(有力議員)との不安と不満が噴出している。このため、泉新執行部も「(出身政党による)垣根をなくした挙党態勢」(泉氏)どころか、「隙間風だらけの党運営」(若手)を強いられそうだ。


 同党の創始者で結党以来4年間、代表の座に君臨した枝野幸男氏が、衆院選敗北で引責辞任したことを受けての代表選は、11月30日の臨時党大会で投開票され、決選投票で泉氏が圧勝して新代表に選出された。ただ、政界では「経過と結果を見る限り、泉氏の勝利は想定通りで、予定調和の代表選」(自民党幹部)と冷笑する向きも多い。代表選には泉氏のほか、逢坂誠二(62)、小川淳也(50)、西村智奈美(54)の3氏が立候補。メディアは「大混戦」とはやし立てたが、結果的に第1回の投票でトップに立った泉氏が決選投票でも逢坂氏に大差をつけた。4人の立候補者のうち、いわゆる中道保守系は泉氏だけで、一部にはリベラル勢力による「2、3、4位連合」での大逆転との見方もあったが、「逢坂氏では枝野路線の継承となり、代表選の意味がない」(若手)との党内常識から、議員票と地方票の双方が泉氏に集まるという「当然の帰結」(同)となった。
◇参院選敗北なら辞任や党再分裂も
 泉新代表は早速、注目の共産党との「限定的な閣外協力」合意について、見直しを明言した。ただ、来夏の参院選での1人区での候補者一本化には共産党の協力が不可欠で、同党の志位和夫委員長は「(合意は)公党の約束」と猛反発する。その一方で、衆院選で立民の「兄弟政党」(泉氏)ながら議席を増やした国民民主党や、立民、国民両党の支持組織となる連合は「共産との共闘」への不満と反発を隠さない。旧国民民主出身の泉氏は両者との連携強化にも前向きだが、「あちらを立てれば、こちらが立たず」のジレンマは深刻さを増すばかりだ。
 加えて自民総裁選に比べ、今回の代表選が全く盛り上がりに欠けたことも大きな不安要因だ。4人の立候補者の知名度不足もあったが、「単なる仲良し同士の学級委員長選挙にしか見えなかった」(自民幹部)のが原因とされる。サポーターと呼ばれる協力党員(約10万人)の投票率が4割台にとどまったことがそれを立証しており、100万人を超える自民の党員・党友の総裁選投票率は約7割だっただけに、党を支えるはずの集団での無関心度が際立ったからだ。
 泉氏は代表選の“戦友”3氏を、西村幹事長、逢坂代表代行、小川政調会長といずれも党中枢に配し、挙党態勢をアピールした。ただ、西村幹事長は共産党との共闘見直しには慎重で、党内調整は難航必至。泉氏の代表任期は2024年9月末だが、来夏の参院選で自民・公明の巨大与党や有力な第3勢力となった日本維新の会に名を成さしめれば、その時点で代表再交代や党再分裂の事態ともなりかねない。泉新体制が臨時国会と年明けの次期通常国会で国民に生まれ変わった姿を見せ、代表交代でも低迷する党支持率を上げるのは「至難の業」(党幹部)で、「八方美人」とやゆされる泉氏の前途は、まさにいばらの道だ【政治ジャーナリスト・泉 宏/「地方行政」12月13日号より】。