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2021/12/20 17:39


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「今、日本が直面する内外の課題」をテーマに講演するジャーナリストの櫻井よしこ氏=18日午後、山口県下関市の下関市生涯学習プラザ

山口県下関市の市生涯学習プラザで18日に開かれた長州「正論」懇話会の第39回講演会では、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「今、日本が直面する内外の課題」と題して講演。世界を二分する米中関係に触れ「価値観を巡る対立が進行している。日本は自立性を高めなければならない」などと訴えた。講演の主な内容は次の通り。


中国は今、大変な勢いで膨張している。これまではアメリカが一強の時代を築いてきが、中国がじわじわ追いつきつつある。

習近平国家主席は2017年の中国共産党第19回党大会で、中国が世界諸民族の中でそびえたつ存在となり、全人類を中国共産党イデオロギーの枠の中に収める世界をつくる、との考えを述べた。私はそのような世界は好まない。断固拒否する。

日本が今、中国の支配下に入っていないのは、日米同盟があるからといって過言ではない。しかし、その米国は、揺れ、後退している。

アフガニスタン駐留米軍の撤退は、米国がもはや絶対的な強国ではない姿をさらした。また、核戦力などの増強を進め、ロシアとの連携も強める中国と経済的、軍事的に向き合うため、二正面作戦はできないとして、中東から手を引くとの姿勢も見せた。中国はそのようなバイデン政権の足下を見て、強い姿勢に出ている。

これに対し米国も、民主主義サミットを主宰するなどしたが、はっきりとした成果は挙げられていない。米国と特別な関係を築いているイスラエルですら、中国に保険をかけるような動きがあるという。


そんな中、日本はどうするのか。他人ごとでなく考えななければならない。

例えばウイグル人への弾圧について、世界各国が、人権問題として、中国政府を非難している。しかし、日本はいまだに非難決議ができていない。そもそも、現状の決議案は中国の国名すら書き込んでいない。それさえも、今国会で見送るとの報道があった。

来年2月に開幕する北京冬季五輪への外交的ボイコットについても、岸田文雄政権は「総合的に考え、タイミングを計っている」とのスタンスだ。一体何を考え、いつ決めるというのか。


岸田首相や林芳正外相は宏池会(岸田派)の政治家だ。「保守本流」の派閥とされる宏池会は、これまでどのような首相を生み出してきたか。

創設者の池田勇人氏は所得倍増を実現したが、憲法論議は避けた。鈴木善幸氏も、日米首脳会談の直後、日米同盟に軍事的意味合いは含まないとの見解を示すなど軍事を忌避していた。宮沢喜一氏も、訪韓直前の朝日新聞による「慰安婦強制連行に軍関与」との報道を受け、事実確認をしないまま、盧泰愚元大統領との会談で公式に謝罪した。

そんな宮沢氏がかわいがった政治家が、日本が米中と等距離で付き合う「日米中正三角形論」を唱えた親中派の加藤紘一氏や、悪名高い官房長官談話を出した河野洋平氏らだ。

歴史問題にせよ、憲法改正にせよ、私たちの誇りを否定してきたのが宏池会ではないか。


日本国に生まれ、自分は何ができるのか。能力を精いっぱい生かして誠を積み上げた果てに何かがなされる。それは必ず、自分だけでなく、地域社会、ひいては国のためになる。

このように、自分自身が生を受けて、育てていただいて、何かの役に立ちたいという誠の心こそ、保守の神髄だ。保守本流を掲げるのなら、どんな形でもいいから人のため、国のために働くべきではないか。

世界で今、進行していることは価値観の戦いだ。日本一国の強さでなく、価値観を同じくする国々の強さを結集して、中国やロシアといった「異形の大国」への抑止力を構築しなければならない。

そんな中で平和を念じるなら、まずは守るだけの力を持たなければならない。岸田氏らは、言葉だけで説得できることはあり得ないことを認識すべきだ。

アメリカに頼らなければ生きていけないという日本の情けない状況に気付き、変えようとしなければならない。自立性を高めなければならない。

国柄をもとにした力を生み出し、誇りを取り戻し、自由主義陣営にとって役に立つ世界を引っ張っていける国になってもらいたい。