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2021年12月21日07時11分

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チュキカマタ銅山で働くチリ銅公団(コデルコ)の労働者ら=2017年、チリ・カラマ(コデルコ提供・AFP時事)




 【サンティアゴ時事】南米チリで行われた大統領選決選投票で新自由主義に否定的な左派ボリッチ氏が勝利した。チリは世界一の銅生産量を誇る資源国だが、ボリッチ氏は資源管理の強化に意欲的で、日本などに悪影響を与えるとの懸念が台頭している。チリが参加する環太平洋連携協定(TPP)の行方にも不透明感が漂う。


 ボリッチ氏は新自由主義が社会格差を拡大させたとの認識の下、経済政策の「修正」を主張。富裕層への課税強化や天然資源採掘のロイヤルティー引き上げなどを打ち出した。チリでは複数の日本企業が銅鉱山の権益を有しており、影響は免れない。電気自動車(EV)用車載電池向けなどで需要が高まっているリチウムをめぐっては、国営企業の設立を提唱。世界最大の埋蔵量を持つチリが国家関与を強めれば、相場をかく乱する可能性もある。
 またボリッチ氏は、過去の政権が締結した貿易・投資協定の一部見直しも主張。当初は、TPPの批准に慎重な姿勢も示したが、批判を浴びて決選投票では態度を軟化させた。「貿易協定の一方的な変更は行わない」と宣言しているものの、懸念は拭い切れない。
 もっとも、議会で左右勢力が拮抗(きっこう)している以上、実際に急進的改革を進めるのは難しい。日本貿易振興機構(ジェトロ)サンティアゴ事務所の佐藤竣平所長は「外資への風当たりは強まるかもしれないが、撤退するという事態にはならないだろう」と予測。「日本とチリの間では経済連携協定(EPA)で低税率が適用されている。TPPの行方にかかわらず、2国間貿易に変わりはないのでは」と話している。