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毎日新聞 2021/12/22 19:06(最終更新 12/22 19:33) 有料記事 3348文字




 今夏に開催された東京オリンピック・パラリンピックの大会経費が明らかになった。大会組織委員会は22日の理事会で1兆4530億円の決算見通しを報告した。新たな公費負担は生じなかったが、改めて経費が膨らむ巨大祭典の現実を見せつける数字となった。2030年冬季五輪招致を目指す札幌市は同じ課題と向き合うことになる。

「巨費投入変わらない」見えぬ全体像
 東京五輪の開催決定後に発足した組織委が、東京都、国とともに計画を大幅に見直し、大会経費として初めて示したのが2016年12月に公表した第1弾予算(V1)だった。その金額は、予備費を除けば1兆5000億円。組織委の財務担当者は「1年延期にもかかわらず、5年前に示した予算の範囲内で収めることができた」と長年の簡素化の努力を強調した。だが、それでも招致段階(7340億円)の約2倍に膨らんだ。ある大会関係者は「減ったことばかりを強調するが、膨大な費用を投じた事実は変わらない」とつぶやいた。

 招致段階の数字は組織委担当者が「必要経費の総額を示していない」と認める通り、招致を勝ち取るために小さく見積もったものだ。このため、膨れ上がる大会経費に大会関係者は頭を悩ませてきた。15年にはメイン会場の国立競技場の総工費の高騰が国民から批判を集め、計画の見直しを迫られた。

 組織委は16年以降、毎年12月に最新の予算を公表してきたが、予備費を外すなど見た目の数字を抑えるのにこだわった。17年以降は横ばいだったが、新型コロナウイルスの感染拡大による延期によって再び経費が増える事態に直面した。会場の使用料など延期に伴う追加経費のほか、感染対策が加わったことで20年末発表のV5予算は2940億円増の1兆6440億円となった。

 延期決定後、組織委は「聖域なき見直し」を掲げて簡素化に取り組んだが、20年10月に公表した削減効果は約300億円。大会経費の2%程度の圧縮にとどまった。施設整備などはほぼ終わった段階で、削減できる余地は少なく、組織委関係者からは「乾いた雑巾を絞るような作業」との声も聞こえてき…

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