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2021年12月24日 8時0分スポーツ報知

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東京アクアティクスセンター



 今夏に行われた東京五輪・パラリンピックは、新型コロナウイルスの流行で一部を除き無観客で開催されるなど異例の大会となった。都は開催に合わせ、国際オリンピック委員会(IOC)の基準に基づいた競技会場を整備。だが、多くの施設で今後、年間収支の赤字計上が予想される。IOCの要求水準が過大との指摘も上がる中、五輪の「レガシー」を生かした都市づくりと有効利用が求められている。(久保 阿礼、坂口 愛澄)

 新型コロナウイルスの流行で、史上初めての無観客開催となった東京五輪・パラリンピック。テレビとデジタルの視聴者数は世界で30億人を超え、国内では日本選手のメダルラッシュに沸いた一方で、大会経費は大会組織委員会が6343億円、都が6248億円、国が1939億円の総額1兆4530億円に上る見通しとなった。巨額の財政負担が生じた宴(うたげ)の後、残された「レガシー」はどう活用されていくのか。

 東京・江東区では、今大会から正式競技となったスケートボードの会場「有明アーバンスポーツパーク」が整備された。当初は大会後に撤去することになっていたが、地元出身の堀米雄斗(22)が金メダルを獲得するなど注目されたことで、恒久施設とする案も浮上。さらに、同区内の夢の島総合運動場内にもスケボーパークの整備を決め、来年11月の利用開始を目指している。若年層のスケボーファンが急増し“聖地”となることを期待する声もある。

 一方で、都内の中で最もアクセスが悪いとされる海の森水上競技場では、想定外の事態も。都によると、大会前に波を抑える消波装置の底部などに多くのカキが付着した重みで装置が沈み、競技に影響するため、約1億4000万円かけて除去した。

 現在も専門家からのアドバイスをもとに、次亜塩素酸などを使って除去を進めるが、対策には約1年かかる見通しで国際大会などの誘致は難しい。また、維持管理費もかさみ、年間収支で約1億5800万円の赤字と試算する。都は「合宿の誘致や水上レジャーなど、さまざまな活用方法を進めたい」と話している。

 対応に苦慮するのには理由がある。IOCは開催都市に、競技施設や宿泊施設などに厳しい条件を付ける。そのため、都心での整備は難しく、敷地に余裕があるが、交通の便が悪い湾岸部に新規施設が集中した経緯がある。都が整備した施設のうち、年間収支の黒字が見込まれるのは有明アリーナだけ。他5会場の年間の赤字総額は10億円を超える。

 当初のコンセプトは「コンパクト五輪」だったが、経費削減のため、会場を神奈川、埼玉、千葉県などに広げることに。会場見直しを決断した元都知事の舛添要一氏は「IOCは『五輪でもうかるから、いいだろ?』という態度で、政治交渉のようだった。ほかの都市でも莫大(ばくだい)な財政負担から、開催を辞退するなどの問題も起きている」と述べた。

 トーマス・バッハ会長が「ぼったくり男爵」と批判を浴びたのは記憶に新しい。元都副知事の青山(やすし)氏は今後の課題について「湾岸部をどのように使うかは長年の課題。官民が知恵を出し合い、公開の場で議論して方針を決めていくべきだ」と指摘。「公共的な役割がある都の施設について、赤字、黒字という観点だけで良い、悪いということを判断するべきではないが、周辺地域を含め、連携を図っていくことが重要だ」。肥大化した近代五輪の課題が突きつけられている。