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2021/12/24 15:27


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閣議に臨む岸田文雄首相(中央)ら=24日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

令和4年度予算案では、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ経済の回復が今後急速に進むことを前提に、歳入の柱である税収が過去最大になると見積もった。歳出も社会保障費や防衛費がかさみ10年連続で過去最大を更新した上、3年度補正予算が「16カ月予算」として加わってさらに肥大化した。歳入、歳出両面の甘い見積もりは、多額の繰越金が問題になった今年の二の舞≠招く恐れもある。

4年度の税収を過去最大の65・2兆円と見込んだのは、前提となる実質国内総生産(GDP)成長率を前年度比3・2%増の高成長と試算したためだ。11月に決めた追加経済対策の効果で個人消費や企業の設備投資が活性化し、消費税や法人税が増えると期待する。

ただ、追加経済対策には多くが貯蓄に回る可能性が指摘される子育て世帯への現金給付や、予算は確保したものの使途が決まっていない基金が多く含まれる。

政府は対策効果で3〜5年度に合計5・6%程度の実質GDP押し上げを見込むが、民間エコノミストの予測では1〜3%台に留まるとの見方が大半だ。対策が想定通りの効果を発揮できなければ、大幅な税収増も画餅で終わりかねない。

一方の歳出も近年は常態化した補正予算と当初予算の一体編成で膨張の一途だ。2年度は3度の補正予算が加わって102・6兆円の当初予算が最終的に175・6兆円に膨らんだが、全体の約2割に当たる30兆円超が自治体の手続き遅延などで翌3年度に繰り越された。巨額の繰越金には営業時間短縮や休業に応じた飲食店への協力金に用いる地方創生臨時交付金が含まれ、支払いが遅れる中で未執行が批判された。

歳出の拡大と税収の落ち込みの推移を描いたグラフはその形状から「ワニの口」と呼ばれる。口の開き具合はコロナ禍で大幅に拡大したが、政府は4年度には縮小を見込む。ただ、10月末の衆院選後に突貫工事で作った3年度補正予算が当初見込み通り執行できなければ、再び4年度に繰り越されかねない。

新変異株「オミクロン株」の出現でコロナ禍のさらなる長期化は避けられない。必要な予算を迅速かつ確実に届けられなければ再び批判にさらされそうだ。

(永田岳彦)