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毎日新聞 2021/12/26 10:00(最終更新 12/26 10:00) 有料記事 2465文字




 東京に駐在する外国メディア特派員らの目に、私たちの社会はどう映っているのだろうか。韓国、フランス、米国、バングラデシュ、シンガポールの個性豊かな記者たちがつづるコラム「私が思う日本」。第34回は聯合早報(シンガポール)の符祝慧・東京特派員が執筆。働きながら2人の子を育てた経験に基づき、仕事をする日本の母親たちが置かれた厳しい環境についてつづる。

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 日本の伝統的な男女の役割分担である「男は外、女は内」の考え方は今なお根強い。多くの母親はたとえ仕事をしていても、男性よりも家事の負担が重い。日本の就業女性は育児の責任から逃れられず、家庭内の雑事がつきまとう。

 働く母親たちは「総合職」だ。コック、保育士、清掃員、買い物係、子供たちに勉強を教える「家庭教師」の役割も。そこにさらに、仕事が加わる。かつて取材した大学の学務課で働く女性は2年前に第1子を産んだ。日に日に大きくなる我が子を見ると満足感に包まれるが、働きながら子供の面倒をみて、家事もこなすのは本当に疲れるという。「毎日、朝早くに近くの保育所へ子供を送り、地下鉄に1時間乗って通勤する。夫は残業続きで、子供のお迎えも私1人でしないといけない」とこぼした。

 日本で2人の子供を育てた私自身も、かつて「お迎え」問題に直面した一人だ。日本の保育所は午後7時に閉まることが多く、親は時間通りに迎えに行かなければならない。シンガポールに住む家族に自嘲気味に話したことがある。「毎日、シンデレラにでもなったみたい。仕事前と仕事後には時計とにらめっこしながら保育所に走る。すごく忙しい時や病気の時は、下手をすると家庭崩壊してしまう」

 「お子さんが熱を出しました」という電話を受けるたびに、仕事を切り上げて迎えに行く方法を考えなくてはならない。母親の責任は重く、子供を育てる女性にとって、生活のリズムは「子供が第一、仕事はその次」だ。

 外資企業向けの大規模な弁護士事務所で働いていた知人の女性弁護士は、第1子の出産後に事務所を退所し、小さなコンサルタント会社で契約社員となった。彼女は「弁護士時代は午後5時前に仕事が終わることはなかった。大きな案件があれば、月の超過勤務は100時間を超え、週末も休めない。子供ができて、こんな忙しさではとても無理だった」と話した。

 安倍晋三氏は首相時代、「女性活躍」を掲げ、3年以内に十分な保育所を設置すると宣言した。ただ私から見ると、…

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