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2021年12月28日07時06分

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香港料理店「八十港」の前に立つケルビン・チェンさん=11日、横浜市

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ケルビン・チェン(中央)さんが営む香港料理店に集まった人々=11日、横浜市




 中国共産党の影響力が強まる香港から日本に移住し、横浜市で料理店を切り盛りして1年になる香港人男性がいる。妻や息子2人と共に来日したケルビン・チェンさん(35)。香港の未来に不安を抱き「子供のために日本で教育を受けさせたい」と決断した。きっかけの一つは、教育現場で進む「中国化」だ。


 香港で生まれ育ち、料理人を目指して働く中、幼い息子の異変に気付いた。幼稚園から「泣き叫びながら帰ってくる」。「競争が激しく、遊びのゆとりがない」様子を見て、教育に疑問を抱いた。朝礼では3歳児にも中国国歌を聴かせるといい、「言葉もまだ話せない子供」に対する愛国教育に憤りを感じた。
 「教育も政治の一環だ」。自身も政治に不満を覚えてデモに参加するようになる中、海外移住を決めた。2019年10月末、ワーキングホリデーで住んだことがあった日本にまず単身で渡り、その後に家族を呼び寄せることにした。
 自分なら香港料理店を開ける―。しかし、外国人が物件を借りることは難しく、現在の店舗を見つけるのに8カ月もかかった。収入が安定するまで民泊を転々とする生活を送った。
 助け船を出してくれたのは、新天地の「先輩」に当たる在日香港人らだった。支援者からは、行政手続きや賃貸借契約などが「外国人に対して非常に不親切」(フリーライターの伯川星矢さん)という声も上がる。
 苦労の末に開店したのは、1980年代の香港の屋台の雰囲気を再現した料理店「八十港」。週末には在日香港人留学生らが遠方からも集まり、交流の場となる。「お客さんから友達になり、私と店を支えてくれる。彼らは人生の宝です」とチェンさん。12月のオープン1周年記念の週末は、日本人を含め約60人が祝福した。