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毎日新聞 2021/12/29 13:04(最終更新 12/29 13:04) 945文字




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「ぱっくりん」の使い方を実演する浜村拓志さん=出雲市佐田町で2021年12月15日午前11時12分、目野創撮影

 触ると悪臭を放つカメムシを簡単に捕まえられるグッズ「ぱっくりん」を島根県出雲市佐田町の「浜村木材」の専務、浜村拓志(たくゆき)さん(46)が発明した。マジックハンドを参考に約8年にわたって試行錯誤し、特許も取った優れものだが、その背景には浜村さんの妻・智美(さとみ)さん(34)への愛があった。

 ぱっくりんは先端部の粘着シートにカメムシをくっつけ、持ち手を握るとシートが内側に畳み込まれる。シートの端を足で踏んで外し、カメムシに触らずに処分できる。ゴキブリやムカデなどにも対応できるという。




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「ぱっくりん」で捕獲されたカメムシ=出雲市佐田町で2021年12月15日午前11時13分、目野創撮影

 浜村さんは十数年前に智美さんと結婚し、山あいにある同町の実家で一緒に暮らし始めた。ある日、仕事から帰ると玄関に伏せられた紙コップがたくさん並ぶ異様な光景にびっくり。同町では家の中にカメムシが頻繁に入ってくる。都市部出身の智美さんはカメムシが苦手で、紙コップをかぶせて動きを封じるのがやっとだったのだ。浜村さんは数年間、その紙コップとカメムシを捨て続けたが、「何とかしてあげよう」と一念発起。2013年ごろにカメムシ捕獲器作りを始めた。

 カメムシに慣れた人はガムテープなどで捕まえるため、まずは棒の先に粘着シートを取り付けたものを考えた。そして柄の先端を持ち手で動かせるマジックハンドを100円ショップで大量に買い込み、智美さんや父で社長の雅男さん(72)も加わって仕事後や休日に試行錯誤。捕獲時に粘着シート自体が壁や天井にくっつかないよう、少し空間をつくるような工夫を重ねた。



 21年3月に完成し、10月からインターネットなどで販売すると北海道や九州からも注文が入り、10本以上まとめて注文する民宿も。「いろんな方がカメムシに悩んでいるんだと知った」と浜村さんは驚く。

 智美さんは夫の苦心の発明に感動……のはずだったが、8年の間に山の暮らしに慣れ、自力でカメムシを処分できるようになっていたという。浜村さんは「結果オーライですね」と苦笑い。「それはさておき、世の役に立つ商品ができてよかった。自然豊かな佐田町のことも全国の人に知ってほしい」



 ぱっくりんは専用のシート2枚付きで3300円。シート8枚セットは440円。問い合わせ先は浜村木材カメムシさん対策室。【目野創】