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2021/12/29(水) 16:42:11.19ID:fI3uKUNE9毎日新聞 2021/12/29 15:55（最終更新 12/29 15:55） 895文字
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ビジネスホテル福助の大倉康弘さん＝大阪市西成区で2021年10月26日午前10時55分、清水晃平撮影
「一晩だけでもゆっくり休んでや」。日雇い労働者が多い大阪市西成区で、簡易宿泊所（簡宿）のオーナーらが20年以上続けてきたボランティアが今冬、一つの節目を迎えた。宿に困った労働者らに無料で1泊してもらう取り組みで、12月初旬で利用者が延べ1万人を突破した。労働者らと共に歩んできた西成の簡宿。「地域への恩返し」と語るオーナーらは今晩も暖かい部屋を用意している。
無料提供が始まったのは路上で生活する日雇い労働者が多かった1999年。大阪万博があった70年代の西成には約2万人の労働者がいたとされるが、90年代のバブル崩壊で多くの人が職や住居を失った。大阪市立大の98年の調査で市内には8660人の路上生活者がおり、多くは西成に集中していたとされる。
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「ビジネスホテル福助」が労働者らに無料で提供している客室＝大阪市西成区で2021年11月5日午後5時35分、清水晃平撮影
「路上にいる労働者のために何かできないか」。簡宿のオーナーらでつくる組合前理事長の山田純範さん（73）は当時の理事会で呼び掛けた。労働者に仕事をあっせんする「西成労働福祉センター」とも協力。本来なら1泊1000円程度を無料にすることで話がまとまり、約30軒の簡宿が手を挙げてスタートした。
センターを通じて利用者を募り、3畳程度の個室に布団、新しい下着も用意した。利用したことがある男性は当時をこう振り返る。「大部屋で寝るのとは違いゆっくり休めた。翌日に宿を出る時には心に余裕ができた」
20年以上の経過で労働者は高齢化し、生活保護を受給してアパートに住む人も増えてきたという。ただ、センター職員だった漫画家のありむら潜さん（70）は「『駆け込み寺』の役割を果たすため、これからも必要だ」と語る。
2020年以降は新型コロナウイルスの影響も懸念されたが、無料提供の取り組みはやめなかった。今は12軒の簡宿が曜日ごとにローテーションを組み、希望者には原則として1泊してもらっている。利用者は12月8日に1万人の大台に達した。
組合理事長で「ビジネスホテル福助」社長の大倉康弘さん（67）は「畳の上でゆっくり休んでもらい、次の日の活力にしてもらいたい。労働者に支えられてきた簡宿なので、恩返しのつもりで今後も続けていきたい」と話す。【清水晃平】
