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毎日新聞 2021/12/31 06:00(最終更新 12/31 06:00) 有料記事 4465文字




 デジタル時代を生きる私たちは今、氾濫する情報の荒海で暮らしている。政治・外交分野から身近な暮らしに至るまで、その多くは「公開情報」だ。誰でもアクセス可能なこうした情報の真偽を見極め、活用するオシント(オープンソース・インテリジェンス)の重要性はこれまで以上に増している。オシントの現状と行方を考察する。

「チャイナリスク」は死活問題
 その勉強会は2021年12月中旬、オンラインで開催された。タイトルは「日本企業が捉えておくべきチャイナリスク」。参加したある中堅商社の輸出管理部門に勤める男性はイベント終了後、記者につぶやいた。

 「米中の対立状況、そして法規制は刻一刻と変わる。情報収集をしないとビジネスが止まりかねない。チャイナリスクは死活問題なのです」

 勉強会を主催したのはIT企業「FRONTEO」(フロンテオ、東京都港区)。国内外約3億社の財務情報や広報文などの公開情報を人工知能(AI)で解析するシステムを開発し、サプライチェーン(供給網)に潜むリスクを分析する。2次取引先の全容把握すら難しいとされる中、同社は10次取引先以降も「可視化」するとうたう。米中対立が激化し、双方による制裁と報復の応酬が加速する中、事業リスクに神経をとがらせる企業のニーズを見込む。勉強会には約100社が参加した。

 このシステムで、企業を実質的に支配する株主の解析も可能になった。念頭にあるのは中国の存在だ。中国政府と関わりのない企業に見えても、株主をたどると、国有企業などを通じて「隠れ株主」となった中国政府が影響力を持つ企業が増えているのだ。

 フロンテオの調べでは、中国政府による実質的な株式の間接保有の比率が50%を超える日本企業は16年に39社だったが、21年には60社に増加。中国国内の企業では同時期に6588社から6万3739社と10倍になり、…

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