https://mainichi.jp/articles/20220106/k00/00m/040/195000c

毎日新聞 2022/1/9 08:00(最終更新 1/9 08:00) 有料記事 2692文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/01/06/20220106k0000m040259000p/9.jpg
2021年春から導入された和歌山大付属中学校のスラックス型制服=和歌山市で2021年6月28日午前11時3分、山口智撮影

 「女子は昔からスカートと決まっています。生徒から特に希望する声もありません」。記者は2020年10月、和歌山県内の公立高校(全日制)で、女子生徒の制服にスラックス(ズボン)を導入している学校がどれほどあるか調べた。結果は35校中18校でほぼ半数。冒頭の言葉は導入していない高校の教諭が発した言葉だ。断定口調がむしろ引っ掛かった。本当にそうなんですか?

「本来の自分出してよいのか」
 取材の中で、ある中学生(15)と知り合った。

 生まれた性は女性。しかし、幼少期から「自分が男の子なのか、女の子なのか分からなかった」という。男性と女性、二つの性が必ずしも自分に当てはまらない「複雑な心の性別」を感じてきた。

 自身のことを「俺」と言ったり、脚を開いて座ったりしていると、周囲から「女の子なんだから」と立ち居振る舞いを注意された。納得できなかった。「うまく表現できないけれど、周りの大人の考える『女の子像』に当てはめられることに、ずっと息苦しさを感じていた」と明かす。一方で「本来の自分を出してよいのか」と葛藤があった。

 中学に進むと、毎日制服を着なければならなくなった。これまで「女性」として校則に従い、スカートをはいて学校生活を送ってきた。リボンなどに違和感があり、教師に相談したこともある。自宅で試しにズボンをはき、ネクタイを締めてみた。しっくりきた。

 「スカートが『絶対に無理』ではない」と言う。「でも、義務づけられることで女の子であることを強制されているように感じる」。男女の垣根の全てをなくせばいいとは思っていない。しかし、服装については「自由でいい」と思う。「青春と言われる10代に自分を出せないと楽しめない。大人になって後悔したくはないから」

 高校進学を控える。制服が選べるなら「たとえ1人でもスラックスを選ぶ」と話す。「初めから選択肢が示されていれば、自分の思いを隠すことで罪悪感を抱くことも、先生と言い争うこともない。選択肢があることが大事」と指摘。「自分に合う仕組みがないのなら作っていこうという思いもある」と頼もしい。

増えるスラックス
 「CCCマーケティング」(東京)の21年6〜9月の調査によると、指定制服がある全日制の都道府県立高校3073校のうち女子がスラックスを選べるのは44・4%の1365校。地域別で割合が高いのは、長野87・8%▽滋賀86・4%▽神奈川84・3%――など。一方、青森、愛媛、岩手は10%未満で最も低い岩手は6・5%だった。



この記事は有料記事です。
残り1657文字(全文2692文字)