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毎日新聞 2022/1/9 10:00(最終更新 1/9 10:00) 有料記事 2636文字




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「ガチャガチャ」と呼ばれる販売機=千葉県内で

 東京に駐在する外国メディア特派員らの目に、私たちの社会はどう映っているのだろうか。韓国、フランス、米国、バングラデシュ、シンガポールの個性豊かな記者たちがつづるコラム「私が思う日本」。第36回は朝鮮日報(韓国)の崔銀京・東京特派員が「親ガチャ」について取り上げる。韓国でも以前、同じ意味の言葉が流行したという。日韓に共通する本質的な問題を探る。

 昨年12月、日本で恒例の「2021ユーキャン新語・流行語大賞」が発表された。私は、日本と関連する仕事をしてもしなくても、毎年この新語・流行語の発表を楽しみにしている。その年にどんな言葉がなぜ流行したのか、なぜ選ばれたのかを調べてみるだけでも、その1年の日本社会をある程度理解できるからだ。昨年の大賞に動画配信大手「ネットフリックス」で配信されて世界的ヒット作となった韓国ドラマ「イカゲーム」が候補に挙がったことが韓国でも話題になった。

 私が最も注目したのは「親ガチャ」という若い世代の新しい造語だった。この言葉を私がツイッターを通じて初めて知ったのは昨年の夏。小銭を入れてレバーを回すと、カプセルに入った玩具が無作為に出てくる「ガチャガチャ」と呼ばれる機械を両親に例えたという説明に、膝を打った。子供は両親を選べない。まるでガチャガチャやくじ引きのように、全ては運にかかっている。

 特に現代は、両親が子供の人生に及ぼす影響が非常に大きい。裕福であれば、良い教育を受ける機会が増え、その分、安定した仕事や給料の良い仕事に就ける可能性が高くなる。少数の「大当たり」の当選者は、そうではない人に比べて、両親から受け継いだ財産と能力のお陰で「大当たり」の人生を生きる可能性が高いのだ。だが、平凡にも満たない「はずれくじ」を引いたらどうなるだろうか。「1億総中流」と言われた時代は終わり、「大当たり」「当たり」を引いた彼らとの格差は、生涯にわたり努力をしても縮めにくいほど広がっているのが現実だ。

 親ガチャという流行語には、自分の運命が生まれた時から決まっているという悲観的な考えや、親の影響下で形づくられた環境は本人の努力で変えられないという、ある種の諦めが表れている。実際にツイッターで若い世代がこの単語を使った投稿を探してみると、自嘲(じちょう)的な投稿が多かった。例えば、「親ガチャの結果が人生の大部分を決める」「親ガチャで外れを引いて、勉強もできず、人気もない」などと書か…

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