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2022/1/9 17:00
産経WEST


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従業員の作業状況を把握するためのシステム。作業の遅れなどを一目で把握できる=京都市のオムロン京都太陽

オムロンが顔認識技術を活用し、工場で働く知的、精神障害者の体調変化を把握するシステムの開発を進め、社外に提供することも視野に入れていることが9日、分かった。体調不良や作業上のトラブルを伝えるのが難しい彼らに代わり、自動で問題を検知する仕組みを作ることで、障害者雇用の促進につなげたい考えだ。

オムロンは障害者雇用を促進するために設立した特例子会社「オムロン京都太陽」(京都市南区)と協力し、システムを開発している。令和3年6月の時点で従業員のうち約6割を占める37人の障害者が働く同社によると、知的、精神障害がある人はコミュニケーションを苦手とすることが多く、体調不良を相談できないまま仕事を続けるケースも珍しくない。顔認識技術を活用し、顔色や表情をもとに体調や精神状態を推定することで、従業員の異変にいち早く対応できるようになるという。

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同社では2年から人工知能(AI)などを活用して製造現場の効率化を図るオムロンのシステム「i−BELT(アイベルト)」を導入し、個々の従業員の作業状況を把握。現在は予定より作業が大きく遅れている従業員がいた場合、上司が様子を確認し、必要に応じて面談を行っている。今後、従業員の顔認識のデータを蓄積し、作業状況のデータと合わせて分析することで、体調変化を素早く察知したり、予知して休息を取らせたりすることが可能になるという。

オムロン京都太陽の三輪建夫社長は「この取り組みが社会全体の労働環境改善につながれば」と話している。顔認識技術を導入したアイベルトについては、将来的に外部への販売も検討しているという。

法廷雇用率届かない企業も、雇用促進に課題
厚生労働省によると、3年6月時点の民間企業で働く障害者は59万7786人で過去最多を更新した。ただ、従業員全体に占める雇用率は2・2%で、障害者雇用促進法に基づく法定雇用率2・3%には届かなかった。法定を満たした企業も全体の47・0%にとどまっており、雇用促進が課題となっている。

こうした状況を改善しようと、障害者の働きやすい環境作りに向けた取り組みを各企業が進めている。障害者の就労支援施設などを運営するカムラック(福岡市博多区)は、情報セキュリティー企業と連携し、昨年6月から障害者の在宅ワークに関する実証実験を実施。実用化に向けて検討を進めている。

また、カー用品大手のオートバックスセブンも3年10月、摂南大などと共同でAI開発業務に障害者を雇用する取り組みを開始。機械学習の初期段階に必要なデータの入力を担ってもらう予定で、就労を希望する障害者が使いやすい入力機器などの開発を進めている。

障害者雇用の促進を目的に設立された特例子会社も増えている。2年6月時点で認定を受けているのは542社で、前年から25社増加した。(桑島浩任)