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毎日新聞 2022/1/15 16:01(最終更新 1/15 16:21) 有料記事 5412文字




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オンラインで対談する台湾デジタル担当相のオードリー・タンさん(右)と池上彰さん=2021年12月30日撮影

 ジャーナリストの池上彰さんが昨年末、台湾のデジタル担当相、唐鳳(オードリー・タン)さんとオンラインで対談した。話題は、新型コロナウイルス対策の秘訣(ひけつ)や若者の政治参加、さらに多様性のある社会を築く方法など多岐にわたった。【構成・福岡静哉】

デジタル技術は民主主義の支え
 池上 早朝の対談になりましたが、眠くはないですか。

 タン 私が眠そうに見えるとすれば、昨日、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を済ませたからです。台湾にワクチンを贈っていただき、日本の国民と政府に感謝しています。私は2回目までは英アストラゼネカ社製のワクチン、3回目は台湾製のワクチン接種を受けました。台湾製の方が副反応は少ないはずです。

 池上 世界中から取材依頼がありますね。

 タン ここ数年、毎日のように米国、アフリカ、欧州など世界各地からオンラインでのインタビューを受け、異なる文化圏を旅しています。

 池上 最近の出来事では、韓国でのオンライン会議に招かれたのに急にキャンセルされてしまいました。韓国が(台湾と対立する)中国との関係を考慮したとも言われています。

 タン 会議当日の朝に(韓国政府側から)電子メールが届きました。「(台湾)海峡に関するさまざまなことを考慮した」という理由でした。台湾の外交部(外務省)は説明を求めましたが、納得がいく回答は得られていません。でも私はその後、韓国の民間団体が主催するオンラインイベントに参加する機会があり、韓国のテレビ局から取材も受けました。韓国の人々との関係は(今回のキャンセルによって)影響を受けていません。

 池上 バイデン米大統領主催の民主主義サミット(昨年12月)でも演説をしました。デジタル技術は民主主義に役立つこともあれば、逆に中国での事例のように抑圧に使われることもあります。

 タン 世界では近年、「公衆衛生やフェイクニュース対策などは、民主主義よりも優先されるべきだ」といった考え方が出てきています。でもそうではありません。「デモクラシーファースト」(民主主義が第一)でなければならない。デジタル技術はあくまでも民主主義を支えるものなのです。

 権威主義体制における問題点は、双方向のコミュニケーションを欠いている点でしょう。台湾では(高速・大容量のデータ通信が可能な回線の)ブロードバンドにアクセスする権利を基本的人権の一つと位置付け、デジタルインフラを整備し、政府と市民の双方向の交流を深める「デジタル民主主義」を大切にしています。

 池上 オードリーさんは若くして大臣になりました。どうすれば若い人の意見を政治に生かせるのでしょうか。

 タン 私は2014年から2年間にわたり、内閣で大臣の「リバースメンター」を務めました。大臣は私よりもはるかに多くの経歴を重ねています。だから普通なら当時30代だった私が教わる側で、大臣は私のメンター(助言者)のはずです。しかしリバース(逆)メンター…

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