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2022年01月16日07時07分

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11日に墜落した台湾空軍のF16V戦闘機6650号機=5日、南部・嘉義




 【台北時事】台湾南部・嘉義で11日、台湾空軍のF16V戦闘機が墜落した。米国の支援で改良された台湾最新鋭の主力戦闘機であり、墜落の原因をめぐり元空軍幹部や地元メディアからは、台湾の防空識別圏への進入を繰り返す中国軍機の対応に追われるパイロットの消耗を指摘する声が上がっている。
 空軍の張延廷・元副司令官は事故後、複数の地元メディアに対し、既存のF16の性能を大幅に向上させたF16Vの操縦はパイロットにとって「これまでの服をそっくり着替える」ほど難易度が高く、相応の訓練が必要だと説明。中国軍機が昼夜を問わず台湾海峡を脅かす中でパイロットの任務は過剰になり「飛行訓練(の確保)に確実に影響している」と語った。
 空軍司令部によると、墜落したF16Vは20度の急角度でミサイルを投下する訓練中、レーダーから消えた。高速のまま海に落ちたとみられる。12日に機体の一部が見つかり、14日夜、遺体のDNA鑑定でパイロット(28)の死亡が確認された。
 同パイロットがF16Vへの切り替え訓練で飛行したのは、この22カ月間で60時間余りだった。これに関し張氏は「通常なら実施される時間数の3分の1だ」と、訓練不足に陥る軍の現状に警鐘を鳴らした。
 また、主要紙・聯合報は、脅威に最前線で対応する空軍が、同時に一層高度な技能を新型機導入によって求められる状況を「両端に火が付いたろうそく」と表現。墜落事故はパイロットの過度な負担に対する警告であり、マンパワーの問題に対処が必要だと訴えた。
 中国軍機が台湾の防空識別圏に進入する威圧行為は、2020年に常態化。21年に入って規模が拡大し、同10月には1日で56機が進入した。台湾国防部(国防省)の統計では昨年1年間で計960機を超えた。聯合報によると、台湾空軍では過去2年間で軍用機計6機が墜落し、13人が亡くなった。