https://mainichi.jp/articles/20220115/k00/00m/040/119000c

毎日新聞 2022/1/16 18:00(最終更新 1/16 18:00) 有料記事 2907文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/01/15/20220115k0000m040121000p/9.jpg
生前のウィシュマ・サンダマリさん=遺族提供

 名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容中だった昨年3月に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の監視カメラ映像を閲覧した立憲民主党の階猛衆院議員に話を聞いた。死亡直前は「断末魔のような声」が発せられていたと明らかにし、即座に救急車を呼ばなかった出入国在留管理庁(入管庁)側の対応などを次の通常国会で追及する意向を示した。【和田浩明、上東麻子/デジタル報道センター】

 映像は名古屋入管が内規に基づいて撮影し、名古屋地裁の証拠保全の手続きの中で遺族代理人弁護士らも閲覧している。今回はこれとは別に野党側の求めに応じて昨年12月24日、衆院法務委員会の理事や委員らに対して入管庁側が編集した約6時間半分を公開した。映像には2月22日からウィシュマさんが亡くなった3月6日までの約2週間分の約295時間が記録されており、今回公開されたのは全体の約2%にあたる。

 階氏は衆院法務委の野党筆頭理事。毎日新聞のインタビューに対して、「断末魔のような声だった。赤の他人でも私なら救急車を呼ぶ。なぜ(入管担当者は)それができなかったのか」と感想を語った。

無力さ、悲しさ、怒り、寂しさ…
 ウィシュマさんは2020年8月に名古屋入管に収容。21年1月中旬ごろから体調不良を訴えて点滴、入院や、健康上の理由などで一時的に収容を解く仮放免を求めたが実現せず、3月6日に救急搬送先の名古屋市内の病院で死亡が確認された。

 階氏が「断末魔のような声」と表現したのは、ウィシュマさんが亡くなる10日前の2月24日、午前4時過ぎからの約1時間の間に何度も発した叫び声のことだ。

 階氏は親を見舞った際にも、同じ病棟内に入院していた患者が亡くなる間際の叫び声を聞いたことがあったという。

 「まさにその時のような声。とてもじゃないがそのままにしておけない」と階氏。さらに、「(点滴や入院治療を)頼んでも応じてくれないむなしさ、無力さ、悲しさ、怒り、寂しさ、いろんな思いがこもったような本当に悲痛な叫びで、非常に胸に迫った」と表現した。

 同じ場面を閲覧した遺族代理人の駒井知会弁護士も「うなるような声で苦しみ続け担当者を何度も呼んだが、なかなか来なかった。むごく、とても正視できないような様子で、なぜ救急車を呼ばなかったのかわからない」と取材に語った。駒井氏は遺族が国に賠償を求める訴訟に先立つ証拠保全手続きの一環として、衆院法務委と同じ12月24日に名古屋地方裁判所で映像を閲覧した。

 階氏によると、看守2人が来てウィシュマさんの背中をさするなどしたが、「(夜明けまで)あと4時間ぐらい我慢して」と伝えて部屋を出ていったと言う。

死亡10日前が分岐点
 階氏は2月24日の午前4時台について「ターニングポイント(転換点)」「ここで救急車を呼ばずいつ呼ぶのか」と述べ、生死を分ける分岐点の一つだったのではないかとの感想を示した。

 入管庁が昨年8月に出した報告書で、この場面は「体調不良を訴えた」と記載されている。2月24日午前1時台にはウィシュマさんの求めに応じて体温や脈拍などを測定したが、異常がなかったことや、ウィシュマさんが病院に連れて行ってほしい、採尿や点滴をしてほしいと申し出たと書かれている。

 また、24日午前3時台には、なぜ自分だけ病院に行けないのかと述べ、…

この記事は有料記事です。
残り1530文字(全文2907文字)