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毎日新聞 2022/1/17 19:29(最終更新 1/17 19:29) 有料記事 2127文字




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北京市内の歩道をマスク姿で歩く親子ら=北京市朝陽区で2022年1月17日、岡崎英遠撮影

 中国国家統計局が17日に発表した人口1000人当たりの2021年の出生率は7・52人で、初めて10を割り込んだ20年(8・52)をさらに下回り、過去最低を更新した。中国政府が一人っ子政策と決別し、人口抑制政策を緩和しても、出生率は低下の一途をたどっている。世界最大の人口を擁する大国・中国はどこに向かうのか。

一人っ子政策と決別「2人目困難」
 「子育てのコストが高すぎる。2人目を産んで育てるには経済的な重圧が大きい」。北京市の国有企業で働く30代の女性は中国の子育ての現状についてこう話す。同じく国有企業で働く夫と2歳の一人息子の3人暮らし。世帯年収は約60万元(1080万円)と低くないが、半分は住宅ローンで消える。子供はまだ幼く、塾や習い事の出費は今後、増える一方だ。

 仕事は忙しく子供と向き合う時間も足りない。今は夫婦の両親のサポートがあるが、高齢で病気も抱えるためいつまで頼れるか分からない。「競争も激しく息子を希望する学校に入学させられるか分からない。今の北京は子育てに適した環境ではない」と訴える。

 教育費の高騰は少子化の原因となってきた。受験競争の激しい中国では、子供を一流大学に入れるため、幼い頃から塾通いや習い事をさせる家庭が少なくない。幼児教育として英語を教える私立幼稚園も急増。北京や上海などでは学費が年10万元を超えるのが普通だ。人気の小中学校に入学できる学区の住宅は価格が高騰し、格差を助長するとして社会問題化している。

 政府系シンクタンクの上海社会科学院は19年に実施した調査で、上海市では中学卒業までに1人当たり約50万元(約900万円)の教育費がかかると試算した。20年の上海市の1人当たり可処分所得は7万2232元(約130万円)で教育費の負担は大きい。

 危機感を強めた中国政府は21年7月、塾通いと宿題を減らすことを目的とした「双減」政策を打ち出した。その内容は、小中学生向け学習塾の新規開設を認めない▽既存の塾は非営利組織化▽国が優秀な教師を起用して無料オンライン授業を始める▽週末や祝日、夏・冬休みの授業禁止――など。学習塾を厳しく規制し、社会に衝撃を与えた。ただ、激しい受験競争が無くなるわけではなく、実効性には疑問符がつく。保護者からは困惑の声が上がる。

 地方出身者には戸籍の壁もある。北京や上海では居住区に戸籍がないと子供を公立校に通わせることさえ極めて難しく、学費の高い私立か、戸籍のある地方の学校に親元から離れて通わせるしかない。

 長年にわたる一人っ子政策で、農村部では「男余り」が常態化している。主に農村を中心に後継ぎとして男児が求められたことなどが原因とされる。このため結婚適齢期の世代で男女比のゆがみは深刻だ。20年の国勢調査によると、中国の男性人口は女性より5%(3490万人)多い。特に20代の差は10%を超える。

 結婚時には男性側が住宅を用意しなればならない慣習も少子化に拍車をかけている。…

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