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毎日新聞 2022/1/18 07:00(最終更新 1/18 07:00) 有料記事 3421文字




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放火事件のあった雑居ビル=徳島市仲之町1で2021年3月15日、国本ようこ撮影

 「ライブを中止や延期させるつもりで火を付けた。事件後は自殺するつもりだった」。アクリル板の向こうに現れた男性は、伏し目がちに語り始めた。

 2021年3月、アイドルグループのライブが開かれていた徳島市内の雑居ビルにガソリンがまかれ、放火された事件。殺人未遂などの罪で起訴された無職の岡田茂被告(39)が毎日新聞記者の接見に応じて事件の動機を初めて明かし、後悔していると強調した。

 徳島刑務所にある拘置施設。岡田被告は落ち着いた様子で私の前に座った。黒のフリースの上着に、黒のズボン姿。事件を起こした理由を尋ねると、こう答えた。「社会的に逸脱したことをすれば、元の世界に戻らなくてよいと思うようになった。事件の1週間前から、常に『死にたい』と思っていたのです」。被告が思い詰めた理由は何か。その心境に迫る前に、事件を振り返っておきたい。(記事後半に被告の一問一答)

「京アニ事件をまねた」
 3月14日午後1時40分ごろ、徳島市仲之町1のビル(4階建て)から「爆発音がして煙が上がっている」と119番があった。3階のエレベーターホールから出火し、床など52平方メートルが焼けた。この日は日曜日で、4階のバーでアイドルグループのライブイベントが開かれていた。経営者の50代男性が煙を吸ってのどにやけどを負ったが、出演者や客ら約70人は無事だった。

 現場から約40キロ離れた徳島県牟岐(むぎ)町で父親と暮らす岡田被告が逮捕されたのは、その10日後。防犯カメラ映像などから関与が浮上した。事件直前にガソリン約15リットルをセルフ式スタンドで購入していたことも判明した。

 徳島地検は21年7月、岡田被告がアイドルグループのメンバーら約70人を殺害しようとビルに放火したとして、現住建造物等放火と殺人未遂などの罪で起訴。「京アニ事件をまねた」と供述したとされ、19年7月に36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件の「模倣犯」として社会に衝撃を与えた。

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