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毎日新聞 2022/1/19 19:14(最終更新 1/19 19:14) 973文字




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水揚げされるクロマグロ。国際的に厳しい資源管理の中、趣味釣りへの規制も強まっていきそうだ=鳥取県境港市昭和町の境漁港で2020年6月5日午前、柴崎達矢撮影

 日本近海などで漁獲される太平洋クロマグロについて、政府は「遊漁」と呼ばれる趣味やレジャーでの釣りに漁獲枠を新設する。水産資源の管理を徹底するための規制強化の一環。厳格な管理が国際的に求められる中、漁師だけでなく趣味で楽しむ釣り人たちにも規制の網が広がることになる。

 水産庁は19日、水産行政の基本方針「水産基本計画」の改定に向けた原案を自民党の会合で示した。遊漁は魚種ごとの漁獲量の全容把握ができていないのが実態だが、原案では「漁業と一貫性のある管理を目指していく」と明記。特に、資源管理が厳しいクロマグロについて「漁業と同じレベルの本格的なTAC(漁獲可能量)による数量管理に段階的に移行する」と規制を強化する方針を盛り込んだ。新たに遊漁規制などを盛り込んだ次期水産基本計画は水産庁の審議会や与党内の議論を経て、3月下旬に閣議決定する予定。



 クロマグロの資源管理は都道府県や特定の漁法ごとにTACが配分され、その漁獲枠内で操業するのが基本だ。一方、一部の過剰漁獲で上限を超えてしまう事態に備え、調整弁として「留保枠」も設けている。これまで遊漁は管理の対象外で、漁師側からは「自分たちが厳しく管理されている傍らで、釣り人が堂々と釣っているのはおかしい」(関係者)といった不満が出ていた。

 こうした中、クロマグロの遊漁についても2021年6月に時限的な規制が導入された。30キログラム未満の小型魚を釣ることを禁じ、30キログラム以上の大型魚は実態把握のために報告義務を課した。すると、規制開始後わずか半月で、当初10トン程度と想定していた年間の漁獲量に到達したことが判明。22年5月末まで時限的な禁漁措置が講じられている。現状では遊漁は専用の漁獲枠がなく、その漁獲量は留保枠に算入されているが、「いつまでも留保枠で吸収する不安定な運用とはいかない」(水産庁幹部)とし、大型魚の漁獲報告を求めて実態把握に努めたうえで、将来は遊漁の漁獲枠を新設する方向だ。




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最高値で競り落としたクロマグロをさばく仲卸業者「やま幸」の山口幸隆社長=東京都渋谷区で2022年1月5日午後、西夏生撮影

 クロマグロは「本マグロ」とも呼ばれ、高級すしネタや刺し身として人気がある。乱獲によって資源状況が悪化したが、国際的な資源管理が奏功して資源量が回復基調にある。21年12月の国際会議では、22年から大型魚の漁獲枠を一律15%増やすことが決定。資源管理の重要性が広く認識されつつある。【浅川大樹】