https://mainichi.jp/articles/20220121/k00/00m/040/133000c

毎日新聞 2022/1/21 15:25(最終更新 1/21 15:25) 1471文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2020/05/19/20200519k0000m040053000p/9.jpg
パトカーの赤色灯=曽根田和久撮影

 秋田県鹿角市が発注した工事に関する入札情報を漏らし、公正な入札を妨害したとして、県警捜査2課などが前鹿角市長の児玉一(ひとし)容疑者(74)と鹿角市の無職、柳沢義人容疑者(75)、同市元建設部長、山口達夫容疑者(63)を公契約関係競売入札妨害などの容疑で逮捕した事件で、県警は20日、3人を秋田地検に送検した。鹿角市は今月中に原因を究明する組織を設置する方針を示すなど対応に追われている。【田村彦志、猪森万里夏】

前市長ら送検
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/01/21/20220121ddlk05040532000p/6.jpg
児玉一容疑者

 県警によると、入札情報を漏らしたとされるのは、2020年3月に閉校した花輪二中の校舎を柴平小として再利用する際に冷暖房設備などを整える工事。条件付き一般競争入札で当時柳沢容疑者と山口容疑者が役員を務めていた「柳沢建設」(鹿角市)が最低制限価格と同額の6719万9000円で入札、落札した。入札には柳沢建設を含めて2社が参加していた。



 児玉容疑者は工事の公告日の20年4月30日から開札日の20年5月19日の間、山口容疑者に対し、公表できない最低制限価格を鹿角市内で教える一方、柳沢容疑者は山口容疑者と共謀し、不正に得た情報をもとに工事を落札した疑いが持たれている。

 山口容疑者は18年3月まで鹿角市の建設部長で、同年5月に柳沢建設に就職し、常務取締役を務めた。柳沢建設は山口容疑者が役員に就いた18年5月から退職した21年9月までで50件以上の市発注の工事を請け負っていたという。


第三者委設置、原因究明へ
 鹿角市の関厚市長は20日午前に臨時の記者会見を開き、1月中に弁護士らを含む第三者委員会を設置し、原因究明や入札制度の改善などの再発防止策を講じると明らかにした。市長は「市政に対する市民の信頼を大きく損ねてしまったことは大変遺憾」とし「捜査に全面的に協力し、全容の解明を待ちたい。同時に職員一同が襟をただし、市民の信頼回復に全力で取り組んでいきたい」とのコメントを出した。

癒着うわさ以前から
 鹿角市が発注した花輪二中の大規模改造工事の条件付き一般競争入札で、官製談合防止法違反などの疑いで前市長の児玉容疑者ら計3人が逮捕されてから一夜明けた20日、一部の市民の間からは「やっぱり」「あのうわさは本当だったのか」といった声が上がった。「市は徹底的に調査し、役所に残る膿を出し切ってほしい」という期待が強まっている。



 柳沢建設は市内の十和田大湯にあり、数十人の従業員の大半は地元採用だ。除雪作業などでも地元住民を雇用するなど地域に貢献する企業として知られている。ただ、退職した市職員の再就職先にもなっており、山口容疑者もその1人だった。関係者らによると、山口容疑者は市の上下水道整備計画などに伴い、1993年に技官として採用され、上下水道課長を経て16年に建設部長に昇進。18年の退職後は同社に21年9月まで勤めていた。

 柳沢建設は市発注工事を数多く受注してきた。児玉前市長の最後の任期になった21年7月までの4年間だけでも市庁舎外壁工事や道の駅おおゆ関連工事を受注している。



 だが市と柳沢建設の関係に首をかしげる人は少なくなかった。在任中、剛腕とも評された児玉前市長と、山口、柳沢両容疑者との間に具体的にどんなやり取りがあったのか、市民の関心が高まっている。

 70代の市民は「市と業者との間に何かあるのでは、と懸念していたが今回の逮捕で『やはりうわさは本当だった』という思いが強い」と憤る。別の60代の男性は「前市長時代のことだが、市政の腐敗をただし、再発防止に取り組んでほしい」と話す。【田村彦志】