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毎日新聞 2022/1/21 17:30(最終更新 1/21 17:30) 有料記事 2665文字




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出入国在留管理庁の大村入国管理センター(長崎県大村市)に収容され、「ティモシーさん」の愛称で呼ばれるネパール人男性が描いたマザー・テレサの絵。ティモシーさんはネパール語の聖書を持っており、牧師の柚之原寛史さんとの面会の最後は祈りの時間だったという=柚之原寛史さん提供

 出入国在留管理庁の大村入国管理センター(長崎県大村市、大村入管)に収容中のネパール人男性(39)の健康状態が極端に悪化しているとして、支援者や代理人弁護士らが「第2のウィシュマさんになってしまう」と入管側に適切な治療を訴えている。直近の1月17日の代理人弁護士との面会では歩行できず、ベッドに乗せられたまま面会室に運び込まれた。食欲もなく、体重は約1年半で13キロ減少したという。入管施設では2021年3月に名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡したほか、19年6月には大村入管でナイジェリア人男性(当時40代)が「飢餓死」(入管発表)している。【和田浩明/デジタル報道センター】

「骨頭壊死症」処方は痛み止めだけ
 このネパール人男性は股関節の痛みを訴えたのに適切な診療を受けられず、症状が悪化して歩行困難になったなどとして21年1月、国に387万円の損害賠償を求め長崎地裁に提訴。22年1月17日には、ほとんど寝たきりの状態なのに適切な医療が受けられないのは人権侵害だとして、代理人の辻陽加里(ひかり)弁護士らが長崎県弁護士会に人権救済を申し立てた。

 訴状によると、男性は09年に来日し調理の仕事をしていたが、18年7月ごろに在留資格を失った。10月に東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容。19年1月に大村入管に移された。

 19年4月4日、男性は施設内でサッカー中に別の収容者の足があたり左股関節を痛めたため、医師の診察を願い出たが、診察が受けられたのは8日後の12日だった。診断は「大腿部打撲」で、痛み止めが処方された。しかし、痛みが続き、約1カ月後にレントゲン検査を受けたが、痛みの原因ははっきりしなかったという。

 症状は悪化し、6月には松葉づえや車いすを使うようになった。8月7日にレントゲン検査をしたところ患部に異常が判明。8月中に外部病院2カ所でMRI(磁気共鳴画像化装置)検査を受けた結果、「大腿骨頭壊死(えし)症」と診断された。

 このころには常に松葉づえ2本を使うようになった。やがて自力で立ったり座ったりすることも難しくなり、20年2月以降はほとんど車いすで移動。股関節に力がかかると強い痛みを感じるため、ベッド上でほぼ寝たきりで過ごすようになった。

 訴状は、大村入管側が骨頭壊死症と診断された後も痛み止めを処方するだけで「病気が悪化するまま漫然と放置」したと主張している。病状進行を調べる定期検査や手術を実施するかの検討も行っていなかったという。

 一方、国側は男性側との訴訟の中で、「(センターは)必要に応じて診療を継続してきた」などと反論する準備書面を提出している。

「体重13キロ減」初めて口にした死
 病状はその後も悪化した。21年秋ごろには自分で排尿できない障害のため…

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