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2022/01/24(月) 15:00:54.09ID:WLJE8r8Y92022年01月24日12時52分
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【AFP=時事】肥大化した肝臓、裂傷を負った幼児、変形した少女の頭骨──。オーストリア・ウィーンの自然史博物館の学芸員は、医学的人体標本の展示を再開するに当たり、倫理と品位の面で現代の一線を越えないよう、いかに展示するかという問題に直面した。(写真は解剖病理学に関する展示物)
人体標本は医学生の研修用に1796年に収集が始まり、現在約5万点が収蔵されている。昨年9月、収蔵品の一部の展示が再開された。中には200年以上前のものもある。
ただ、今日の社会においては、死者の尊厳、権力と搾取、本人がはるか昔に亡くなっているとはいえ公開することへの同意の有無といった倫理的な問題よりも公共の利益が上回るのかという難しい問題が突き付けられる。
学芸員のエドゥアルト・ウィンター氏は「できる限り説明を施すことによって、見せ物にならないよう注意した」と話す。展示室での撮影は禁止されている。
博物館の利用者は、ウイルス性感染症の症状や、やけどを負った血管の状態などを学ぶことができる。人間の臓器や頭骨など、他国では専門家しか目にできないようなものもある。
一般公開に賛同する人は、病気や健康に関する科学的研究について学べる点が公共の利益になると考えている。
展示責任者カトリン・フォーラント氏は、何らかの病気を患っており来館する人もいると話す。
■「新たな意識」
自然史博物館の解剖学資料コレクションは一般人が見学可能なものとしては世界最大だが、展示されているのはごく一部だ。
10代の子どもたちを引率し来館した生物学教師のクリスティアン・ベハフィーさんは「以前の展示も見たことがあるが、今の方が周到に準備されている。全ての展示物に説明書きがあり、情報量がはるかに多い」と話した。
欧州ではエジプトのミイラの展示が始まった16世紀末から、遺体が展示資料として扱われてきた。
フランスの国立科学研究センター研究員で、文化財に関する財産法の専門家マリー・コルニュ氏によると、2000年代初めには遺体展示に対する「新たな意識」が広がってきた。
19世紀に欧州中を見せ物として連れ回されたコイサン人女性サーキ・バートマンの遺骨などの返還を、南アフリカが要求したことがきっかけだった。
バートマンが亡くなると、遺体は解剖された。頭骨などの骨や性器は、仏パリの人類博物館に1974年まで展示された。
2005年前後にはまた、プラスティネーションと呼ばれる保存処理を施された遺体の展示が世界的に人気を博し、議論が巻き起こった。主催者が適切な同意や遺体の来歴を示せなかったとして、一部都市では展示が禁じられた。
■倫理観の変化
遺体の展示をめぐる議論を促進するため、国際博物館会議は、人間の遺体の収集は「安全に保管し、尊厳を持って管理できる場合に限る」とする倫理綱領をまとめた。収集に際しては、死者の出身地の共同体の「利益と信仰」に細心の注意を払うこととしている。
パリのソルボンヌ大学に保管されている医学標本の管理責任者、エロイーズ・ケテル氏も標本の展示をめぐる倫理的問題に直面し、「従来通りの展示はできない」と考えたと話す。
「資料がなぜ収集され、保管されたのか」ということを来館者に伝えなければならないと指摘する。
ウィーンでの展示に関しては、他の欧州諸国での展示に比べ、植民地主義にまつわる難問題をそれほど伴ってはいない。しかし、展示責任者のフォーラント氏は、違法に収集されたものではないということとともに、「資料収集の文脈を理解すること」が重要だと語った。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕