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毎日新聞 2022/1/24 19:46(最終更新 1/24 19:46) 901文字




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上空の水蒸気を観測するマイクロ波放射計=気象庁気象研究所のホームページから

 各地で相次ぐ豪雨災害の一因とされる「線状降水帯」について、気象庁は今年6月ごろから予測情報の発表を始める。全国を11の地方に分割し、線状降水帯が生じる可能性があれば半日前に明示する。将来的には地域を細分化するなどして、多様な予測を出したい考えだ。

 線状降水帯は、雨を降らせる積乱雲が次々と発生して長さ50〜300キロ程度の帯状に並ぶことで、同じ場所で数時間にわたって雨が降り続ける地域・現象を指す。熊本県などで死者・行方不明者88人を出した2020年7月の豪雨や300人超が犠牲となった18年7月の西日本豪雨の原因とされる。




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マイクロ波放射計の設置予定地点

 気象庁は全国を「九州北部地方」「中国地方」など11地方に分割し、それぞれについて予測する。24年に都道府県単位、29年には市町村単位での発表を目指す。半日前に予測を出すことで、大雨となる前の早期避難を促したい考えだ。

 気象庁は一方で、迫り来る危険に言及してすぐに避難してもらう予測情報を出す方針も決めている。こちらは23年に30分前、26年には2〜3時間前に予測を出したいとしている。地域の単位をどうするかなど詳細は今後検討するという。



 線状降水帯の発生を予測するには、積乱雲のもとになる水蒸気の量を正確に捉える必要がある。このため気象庁は21〜22年度、上空5キロまでの水蒸気の分布を水蒸気から放出されるマイクロ波から観測する「マイクロ波放射計」を、西日本を中心とする17カ所に新設。さらに理化学研究所と富士通が開発し、世界最高水準のスーパーコンピューターとされる「富岳」と既存のスパコンを併用し、情報を迅速に分析する。

 気象庁の長谷川直之長官は24日、防災気象情報に関する有識者会議の初会合で「(線状降水帯に関する)予測の第一歩を踏み出し、順次精度を上げていく。精度に見合った情報の伝え方を考えなければならない」と述べた。会議では具体的な情報提供の方法や避難にどう役立てるかを検討する。



 線状降水帯を巡っては、気象庁はこれまで、既に発生した線状降水帯について速報する「顕著な大雨に関する情報」を出していた。この情報は21年6〜9月に計17回発表されている。【井口慎太郎】