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[ 2022年1月25日 05:30 ]

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日大の田中英寿前理事長
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 前理事長らが逮捕、起訴された日大について、文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団が2021年度の私学助成金を全額不交付にする方向で検討していることが24日、関係者への取材で分かった。前理事長の田中英寿被告(75)が起訴された所得税法違反事件や元理事の背任事件といった不祥事が相次ぎ、厳しい対応が必要だと判断。事業団の運営審議会で26日に正式決定する。

 私学助成金は、文科省が事業団を通じ間接的に補助する形で、学生数や教員数などを基に算定する。役員らが学校経営に関する刑事事件で逮捕、起訴された場合などに減額や不交付とするペナルティーがある。日大の20年度の私学助成金は、早大に次いで2番目に多い約90億円。毎年度2回に分けて交付され、日大は昨年10月の審議会で1回目が「保留」になっていた。

 日大は、20年度と同じ規模なら90億円もの財源を失うことになる。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は想定される事態として(1)学費の値上げ(2)教職員の賃金カット(3)教育投資の抑制(4)資産の売却の4点を挙げ「このうちのいずれか、もしくは複数が起きるのは不可避だろう」と指摘した。

 中でも懸念されているのは学費値上げだ。石渡氏が2012年から21年までの学部ごとの初年度納付金を調べたところ、16学部のうち12学部(16年新設の2学部も)で値上がり。この10年で、文理学部生命科学科が143万円から174万円、同学部情報科学科が138万円から168万円に上がるなどしていた。「値上げした経緯があるので今後も考えられる」と指摘した。一方、日大は昨年12月、在学生と22年度入学予定の学費に関して「卒業まで変更ありません」と公言している。

 日大は18年度もアメリカンフットボール部の悪質な反則問題や医学部の不適切入試を受け、私学助成金を35%減額された。不交付が決まれば、原則翌年度も不交付となる。3年目以降は減額幅が75%、50%、25%と段階的に縮小されるが「実質、70%カットが5年間続くのと同じ。これは相当重たい処分だ」と石渡氏。「130年を超える日大の歴史で過去最大のダメージと言っていいかもしれない」と、今後の大学経営は厳しさを増すとの認識を示した。