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毎日新聞 2022/1/30 12:35(最終更新 1/30 12:35) 740文字




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渡辺宏容疑者(左から2人目)を乗せた捜査車両=埼玉県ふじみ野市で2022年1月28日午前8時14分、平本絢子撮影

 埼玉県ふじみ野市の民家で発生した立てこもり事件で、無職の渡辺宏容疑者(66)が前日に死亡した母親(92)の「焼香に来てほしい」と伝えて担当医師の鈴木純一さん(44)とクリニックのスタッフを呼び出していたことが捜査関係者への取材で分かった。渡辺容疑者が自宅に安置していた母親を蘇生するよう鈴木さんに依頼し、丁重に断った鈴木さんらに持ち出した散弾銃で発砲したとみられている。県警は関係者から状況を聞き取るなど詳しい経緯を捜査している。

 渡辺容疑者は殺人未遂容疑で逮捕後、殺人容疑で送検されている。

 捜査関係者によると、渡辺容疑者は母親の医療・介護にあたっていた鈴木さんと在宅医療クリニックのスタッフ計7人を自宅に呼び出した。蘇生を丁重に断った鈴木さんに発砲した後、理学療法士の男性(41)に発砲、医療相談員の男性に催涙スプレーをかけ、別の医療相談員にも発砲したと供述している。



 鈴木さんは至近距離から胸に銃弾を受け即死したとみられる。理学療法士は重傷で、医療相談員には当たらなかったといい、少なくとも3発を発砲している。渡辺容疑者は散弾銃を2丁所持しており、そのうち1丁は催涙スプレーをかけられた医療相談員が奪い取って持ち去った。

 渡辺容疑者の母親は他のクリニックで受け入れを断られていた。鈴木さんのクリニックは5〜6年前から受け入れて親身に対応していたものの、渡辺容疑者はスタッフにクレームや罵声を浴びせることがあったという。



 渡辺容疑者は「母が死んでしまい、この先いいことはないと思った。自殺しようと思った時に先生やクリニックの人を殺そうと考えた」と供述。渡辺容疑者が母親の死で自殺を思い立ち、治療に当たってきた鈴木さんらを巻き込んだ可能性が高まっている。【成澤隼人、平本絢子】