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2022/02/05(土) 16:24:12.21ID:r0wY5zT39毎日新聞 2022/2/5 14:24（最終更新 2/5 14:28） 1529文字
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報告書案を示したリニア開業後の影響を研究テーマにした委員会＝静岡市葵区で2022年1月31日午後1時11分、山田英之撮影
未着工のリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区を巡り、静岡市は開業後の影響をテーマにした研究を進めている。しかし、国土交通省の有識者会議が約1年8カ月かけて大井川の水問題に関する中間報告をまとめても、流量や水質の悪化に対する流域住民の不安は払拭（ふっしょく）できていない。JR東海が計画した東京・品川―名古屋間の2027年開業の延期は確実な情勢だ。【山田英之】
経済活動「中間駅より優位」
「リニアが開業し、国内のヒト、モノ、カネ、情報の流れが変化すれば、さまざまな影響を受ける」。静岡市と地方自治研究機構が共同で進めるリニアの影響予測に関する研究委員会（委員長、村山顕人・東京大大学院准教授）は1月31日、報告書案を示した。
報告書案で影響の例に挙げたのは、首都圏からのアクセスのよさ。静岡市は東海道新幹線で東京から約1時間で移動できるが、リニアの停車駅が設置されない。リニア開業後は停車駅を設ける山梨、長野、岐阜、愛知各県も1時間以内で移動可能になる。静岡市の優位性は相対的に低くなると想定する。
国内経済の中心がリニア側に移ることで、地方の経済活動が大都市圏に吸い上げられて弱体化する「ストロー効果」も懸念される。ただし、報告書案は開業時期を「工事の進捗（しんちょく）状況から、27年の開業は難しい状況」とみる。
リニアの中間駅ができる神奈川、山梨、長野、岐阜の街づくりと静岡市を比較した資料も委員会で示された。資料をまとめたコンサルタント会社は「神奈川県駅は首都圏のベッドタウンの性格が強く、静岡市と都市の性格が異なる」「山梨、長野、岐阜県駅はリニア駅と現在の中心市街地が離れ、駅周辺で新しい街づくりを検討している状況」と分析。東海道新幹線の駅と市街地が同一地点にある静岡市は、リニアの中間駅周辺よりも経済活動や暮らしの場としての立地優位性が高いと評価した。
報告書案は、リニア中間駅との違いを際立たせるため、静岡市ならではの街の個性・歴史・伝統・文化の活用、名物・名所の確立を提言する。
リニア開業後、東海道新幹線静岡駅に停車するひかり、こだまの本数が増える可能性も指摘した。リニアの運行本数を1日当たり156本と試算。のぞみ188本（21年9月時点）のうちリニアに転換されない32本分が、ひかり、こだまに移行した場合、ひかりは37本から48本、こだまは71本から92本に増加すると予測する。
のぞみ188本がすべてひかり、こだまに移行した場合、輸送能力は最大2・7倍になると見込む。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で東海道新幹線の乗客数が大幅に減ったように、新幹線の乗客数は社会、経済状況に左右される。
川勝平太知事は20年10月の定例記者会見で、県とJR東海の間にリニア開業後、静岡駅に停車するひかり、こだまの本数を増やす約束はないと明言。新型コロナや電力供給事情に触れて「非常に厳しい状況。のぞみ（の機能）がリニアに移る。ひかり、こだまが中心になるという甘い話は、簡単にできるような時代ではなくなってきた」と述べた。
報告書案は市内に事業拠点を置く企業、大学、移住支援団体から意見を聞いた結果も紹介。静岡市の弱点として、宿泊・滞在の仕組みづくり▽空港へのアクセス▽交通渋滞▽道路、公共交通機関の整備▽若者が仕事に就きやすい環境――などが挙げられた。
開業後の研究は、静岡商工会議所が19年、静岡市に要望。市は20年に研究会を設けた。研究会の議論を踏まえて市と地方自治研究機構が21年度、有識者らによる委員会を3回にわたって開催。委員の助言を受けて研究を続けてきた。委員の意見を反映させて、静岡市は3月中旬に報告書をまとめ、公表する。
