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2022/2/5 18:08


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魚釣島近くで、海上保安庁の巡視船が中国公船の動きを警戒するのを見つめる調査船の乗組員=1月31日早朝、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺(石垣市提供)

中国が海警船の武器使用権限を明記した海警法を施行してから1日で1年が過ぎた。この間も尖閣諸島(沖縄県石垣市)の接続水域内で海警船が航行を続け、昨年1年間に海上保安庁の巡視船が確認した連続日数は157日で過去最長となった。日本だけではなく米国など各国が懸念を表明しているが、中国の力を背景とした現状変更の試みは今も進行している。

「わが国の抗議にかかわらず中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺の領海へ侵入を繰り返している。このような試みは断じて容認することはできない」

岸信夫防衛相は1月28日の記者会見で海警法施行1年を前にこう語気を強めた。昨年1年間に尖閣諸島付近の接続水域で確認された海警船の活動日数は計332日で、過去最多だった令和2年の333日とほぼ同水準。連続日数は2〜7月の157日に及んだ。領海侵入が確認されたのは昨年1年間で計40日。領海内で付近を航行していた日本漁船に接近しようとする事案も発生した。

中国は昨年2月1日から海警船に武器使用の権限を付与する海警法を施行した。この1年間に武器使用は確認されていないが、同法22条では「武器使用を含むすべての必要な措置」が可能としている。どのような場合に、どのような対象を想定しているのか不明で、日本政府は当初から「問題のある規定を含む」(菅義偉前首相)と批判している。

防衛省は施行後から中国側に会談を求めてきた。昨年12月下旬には、岸氏が中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相に深刻な懸念を伝達。同法の内容や運用について説明を求めたが、協議は平行線に終わった。

政府は各国との会談で懸念の共有を呼びかけた。1月21日に岸田文雄首相とバイデン米大統領が行ったテレビ電話形式の首脳会談では、東シナ海における「一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対」することで一致。南シナ海や大洋州で中国から圧力を受けるオーストラリア、ベトナム、フィリピンなどの各国も懸念を表明した。

岸氏は1月28日の記者会見で「着実に懸念が広がっている。今後ともさまざまな機会をとらえて国際社会へ発信していくことが重要だ」とも述べた。政府は偶発的な衝突を防ぐため、すでに日中間で合意しているホットライン設置を今年前半にも目指す方針だ。(市岡豊大)