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毎日新聞 2022/2/8 19:00(最終更新 2/8 19:00) 有料記事 2765文字




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サイパンに入港する「ロサンゼルス」級原潜。豪州が訓練用に購入する案も出ている=米国防総省提供

 米英豪3カ国によるインド太平洋の安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」により、豪州の原子力潜水艦取得に道が開けた。台頭著しい中国の抑え込みに「戦略的効果が大きい」と評価する声がある一方、米シンクタンク、カーネギー国際平和財団のアクトン博士らからは「核不拡散政策に深刻なダメージを与える」との批判が上がる。

 懸念は核燃料にある。原潜の核燃料は国によって異なるが、米英は核兵器と同じ濃縮度90%以上の高濃縮ウラン(HEU)を使う。出力が大きいため原子炉を小型化しやすく、燃料交換も不要でコストを削減できる。原潜と原子力空母を合わせて約70隻を運用する米海軍は、毎年「核兵器100発分」のHEUを消費する。

 「アトムズ・フォー・ピース(原子力の平和利用)」を旗印に米国は冷戦時代、日本などの同盟国を囲い込むため研究炉用のHEUを供与した。AUKUSもHEUを提供する点ではこの構図と同じ。ただ、米国は2000年代から核拡散や核テロへの懸念が高まったことを背景に、提供したHEUの回収をロシアとともに進めており、これに逆行する。ロシアは「米国は最も扱いに注意を要する技術と物資を豪州に拡散させることを決定した」と強く批判している。

 新たな核兵器保有国の誕生阻止を目指す核拡散防止条約(NPT)。その実効性は「核の番人」と呼ばれる国際原子力機関(IAEA)が実施する核施設査察で保たれている。だが、…

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